淘汰の国のアリス | ナノ

「…無茶苦茶だ…。」
「ああ、そうだが…。」

ここでリタイアを申し込んだら処刑。途中で逃げ出したら処刑。一人任せにしたら処刑。「参加する」以外の行動を選択した場合に待ち受けるのは「死」のみだ。他人の死を選ぶか自分の死を選ぶか。まさかここまで極端な選択肢をつきつけられるとは、これ自体がアリスには酷である。

「…そうだ!おい、アリス!」
こんな時に何か思いついたのかレイチェルが相手側に気付かれないようアリスを手招きで呼んだ。そして耳打ちをする
「何?」
「俺が先手をきって前へ進むから、お前は俺が倒した奴らのアレをこうするんだ。」
そう言いながらレイチェルは自分の首元(アレ)に右手を立てて滑らせた。いわゆる首をはねろという事を仕草で伝えたのだ。勿論それで「わかった」と言うわけがない。
「そ、そんなの無理に決まってるじゃない!!」
「死んでる奴をアレするんだからマシだと思ってくれよ…」
彼なりに酷な事はさせたくないと考えての提案だった。一任せにしてはいけないのだから仕方ない。でも普通の感覚の人間、色々と左右されやすい敏感な年頃の少女にはそれは尚も堪え難い事だ
「…貴方、正気なの?」
。アリスの顔は蒼白で涙目になり震えていた。
「なんで罪の無い人を殺さなくちゃいけないの?なんで人殺しをゲームにしちゃうの?嫌…嫌よそんな…!いっそここで私が棄権したら…ゲームが…あの人達は…ッ」
「どっちにしたってあいつらは殺されるんだよッ!!」
肩をつかまれた瞬間、アリスは我にかえり目を丸くした。

「お前がリタイアしたら処刑されるのはアリスだけじゃない。俺も、シフォンもフランもみんなまとめて殺される。女王サマはそんな奴だ。」
説得するレイチェルは真剣で、悔しそうで、まるで自分に言い聞かせるようにも見えた。
「とりあえず今は俺の言う通りにするんだ、いいな?それと誰かのために自分が死んだらとか考えるのは二度とやめろ。」

そっと肩から手を離して背中を向けてそのまま迷路の入口まで一人歩みだす。

「お前のためにも、死にたくないのに死んでいった奴らのためにもな」

アリスの耳に届く事はなく、しばらくしてから開始の合図である鐘が鳴った。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -