*その頃、アリス達は…*
「ここで…ゲームをするの?」
「そうだ。」
一行が連れて来られた場所は、いわゆる迷路だった。白やピンクやその中に紛れて深紅やらのバラの花を咲かせている暗い緑の光沢のある茂みが壁のように厚く、そして高く立っている。更にバラの壁は長く続いては曲がったり切れていたり塞がっていたりと沢山の通路を作っていた。その景色に唖然としながらゆっくりと階段を降りる。見晴らしがよかったのが会場に着いたら結構な圧迫感だ。
「広いし難易度が高そうね!…じゃないわ。トランプを使ったゲームでしょう?なんでこんな所に連れて来られたの?」
「そうだよ白ウサギ。広いも難易度の高い迷路も関係ないじゃないか。」
アリスの問いを拾ってシフォンも尋ねた。彼もこのような事は初めてらしい。
「私からは話せない。女王陛下が直々に説明してくれる」
そうとだけ言ったピーターは斧を持った手を後ろに隠した。
「…言えるとしたらトランプの意味を履き違えない方がいい、かな。」
誰にともなく呟くピーターに疑問を感じる三人。正確には二人と一匹。フランネルは黙って赤いバラをじっと見つめていた。
パッパパーン!
「「!!?」」
突然隣からラッパの音が鳴り響きアリスとレイチェルは心臓と同時に身体が跳ね上がった。なんとピーターの手には物騒な片手斧ではなくリボンの巻かれた黄金のラッパが握られていた。確か斧以外は何も持っているようにはなかったがもしかしてあの斧がラッパに姿を変えたのか?ふとシフォンの杖の件を思い出す。どこで売っているのだろう。
ラッパの音を合図に向こうの方がざわついてきた。ローズマリー、隣には髭を生やした優しそうな顔の男、鎧を身にまとい後ろに大剣を背負った精悍な顔つきの青年、後ろには総員といっていい程の兵士が続いていた。
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