淘汰の国のアリス | ナノ



*一方、地下処刑場にて*




「えー…ナターシャ=ベルガモット公爵家夫人。ただいまより貴方の処刑を執行する。」

一人のトランプ兵が手に持っている薄い紙に書かれている文面を淡々と読み上げる。その後、ガシャンという重い音とともに分厚い石の壁がゆっくりと上がった。

辺り昼間だというのに真っ暗で冷たさを感じる空気が満ちている。そこまで広くもないようだ。兵士が咳ばらいをした瞬間、天井の四方の隅についていたランプの光がついた。そのおかげで室内の様子がはっきりと把握できるぐらいの明るさにはなった。

他にも二人の兵士がいた。その間には

真っ白の薄汚れた服を着たナターシャと呼ばれた少女が後ろで両手と両足をきつく縛られた状態で正座をしていた。ずっと下を俯いていた顔を上げた。生気はない、しかしその表情は何故か笑みを浮かべていた。

兵士はナターシャに目を向けず引き続き、文面を読み上げた。

「今回は本人の希望により身内も呼ばずこのような形で最期を送る事になったが、せめて最期に、誰かに残しておきたいメッセージはないか?」
「…そうね。」

ナターシャはしばらく考えた後、穏やかな笑顔で兵士にこう告げた。

「…私からは何もないわ。」

「…そうか。」
そう言った兵士の視線は紙ではなくナターシャに向けられていた。本当に、優しい笑顔だ。

人は死を間近にした時には全てを悟るのか。それとも、悔いのない人生を送ってきたのだろう。


なら焦らす必要なんか尚更ない

早く「解放」してあげよう


兵士が頭上に高らかと右手を上げた。その合図と同時にナターシャの側に立っていた兵士が手に持っていた斧を、少女の細い首をめがけて力いっぱい振った。




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