淘汰の国のアリス | ナノ



アリスはずっとずっと同じ道を走っていた。暗い何もない空間を延々と走り続けていた。障害物はなく景色もないので自分が真っすぐ走ってるのかわからない上に肝心の白ウサギを見失ってしまい、正直泣きたい気持ちでいっぱいだった。

「…どこなのここ…何も…誰もいない…」

一体どこまで走ったのだろう。ふと穴にいた時を思い出す。あの時も確かに怖かったが、白ウサギが状況を説明してくれる。何より一人じゃないことが安心だった。

それが今では真っ暗な中物音一つせず、誰かがきてくれそうな予感もしない。

白ウサギは待ってくれている気も更々しなかった。

アリスは息を切らしながら休むことなく走った。



「きゃあっ!!」
何もないはずの道で足を滑らせ前のめりに転んだ。小さな悲鳴だけが空間に響く。アリスはゆっくり肘を立てて身体を起こし、服は汚れてないものの赤くなった膝を見てとうとう堪えていた感情が込み上げてきたのか涙が地面にこぼれ落ちた。

「…うぇ…なんなのよ…もう…!なにが不思議の国よ!お話には…こんなの…なかった!…っ、もし私が危ない目にあっても…不思議の国だからって…片付けちゃうの…?……っく…ひどいわ…あんまりよ…っ!」

足に力が入らず力なく座る。手で拭い、しまいには袖で顔を擦り、顔は腫れたように赤くなった。嗚咽して苦しそうなむせつつ独り言を続けた。

「……。でも…私も……知らない人についていっちゃいけないって…約束守らな、かったから…人じゃないけど…。そうなんでも…都合よく…ならないわね……。」

と自分に言い聞かせばゴシゴシと雑に顔を擦り痛みの残る膝を曲げ立ち上がった。
「まずはここをでないことにはどうにもならないもの!」






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