淘汰の国のアリス | ナノ

「そうとなれば決まりじゃ!そこにおる者は全員準備に取り掛かれい!!まずは会場の手配じゃ!!」
「はいっ!!」
空間内には部下に命令する女王の声が響き渡った直後に兵士達は清々しい返事と音のなるぐらいの機械顔負けのびしっとした敬礼をした。

「準備には手間を取るだろう。少しばかり城内を回っていくがよい。」
「ありがとうございます。」
アリスは軽く頭を下げた。

「案内人には、そうじゃな…。ピーターを遣わそう。しばしそこで待っておれ。」
そう言ったきりローズマリーは数人の兵士を後ろに付けて足早に扉の向こうに消えていった。ヒール独特の甲高い足音がしばらく続いたがやがては消えた。


「………う、うわあああ大変だ大変だ!急がなきゃ!」
「会場とはどこだ!バラ園か?」
「ぎゃああああああ!クビは嫌だあああ」
それを確認したや否やその場にいた兵士はまるで取り乱したように一斉に慌ただしく走り回った。時には悲鳴を上げているものもいる。一方騒然とした中でアリスは緊張感から解放され一気に体の力を抜いた。

「……はぁ〜…。なんだか話しただけで疲れちゃったわ。」
「よくやったじゃねーか。なあ、アリス。」
「そ、そうかしら…。」
後ろからまあ馴れ馴れしく肩に肘を乗せてくるレイチェルは満面の笑顔だ。アリスも安堵の笑みを浮かべる。

「あ…帽子屋さん…その、さっきはありがとう。」
周りの雑踏に掻き消され聞こえていないのかシフォンは振り向きはしない。しかしその声は彼の耳にしっかりと届いていた。

「…礼は言わないで欲しい。」
「………なんて…?」

今度はアリスの方が聞き取れなかった。そのことは彼にとってはどうでもいいことだったのだろう。落ちそうな帽子をおさえ玉座の方を見上げながら呟いた。
「…クビになりたくない為に必死なんだな…。」
「厳しい上司なのね。」

アリスは忙しなく動く兵士達を苦笑いで眺めた。

「そうだな、首だけにはなりた…」
「やめろ!!」
シフォンが何か言うのを険しい顔でレイチェルが遮った。すぐ隣だったのでアリスはびっくりしてそっと顔を覗き込む。視線を察した途端何事もなかったかのように慌てて笑顔を作る。





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