淘汰の国のアリス | ナノ


「…ジャックさんという方なら先にどこかへ行きましたが…」
しかもかなり余計な事をして一人先へ森を抜けてしまったが。そのせいか良い印象を抱いていない。

「あやつ…!仕事を投げ出しおって…許さぬ…!」
ローズマリーはまたもや怒りをあらわにした。短気なのかもしれない、しかし頼んだ言い付けを守ってくれなかったのに対してそうなるのは当たり前ではあるしアリスからしてみてもあんな事はせずここまでついてきて欲しかった。

「…いや、そうでもないかも…。」

「女王陛下!奴の事も今は後です!とりあえず客達を…」
玉座の側で度々怯えたような表情を浮かべる兵士から諌められ、ローズマリーは一人ぶつぶつと文句をたれながらゆっくり立ち上がった。咳ばらいをして平常心に戻ったのか吊り上がっていた眉尻も下がる。

「…そなたの為にとっておきのゲームを用意しておる。よければ一戦交えないか?」

「…ゲーム…?」
その言葉に一瞬「何を言ってるのだろう」と疑ったが、なんせアリスはゲームといった類が大好きだ。女王、そんな方が直々に自分なんかを誘ってくれた上に「とっておき」と言われては期待せざるをえない。

「まあ拒否権なんてないようなものだが…」
後ろで呆れたようにぼやいているシフォン。アリスに断る理由がなかった。
「ええ、勿論!大賛成です!」
「さすが。それでこそアリスじゃ。」
ローズマリーは会ってから初めて、嬉々としてニッコリ微笑んだ。それを見てアリスも「純粋に遊びたいだけなのね」と堅い印象が和らいでいく。
「あの…ところで、どんなゲームなんですか?」
この流れで思いきって尋ねてみる。ローズマリーは上機嫌で変な癇癪を起こすことはなかった。幸いだ。

「今まではベタにオセロやクロケーやらときたが…「トランプ」を使った遊びをしよう。開始までのお楽しみじゃ。」
アリスはより一層期待に胸が膨らんだ。
「ババ抜きかしら…七並べかしら…いや、きっと今までにないような遊びに違いないわ!」

アリスの独り言を微笑ましく見届けたローズマリーは玉座にかけてあった黄金の杖を振りかざした。





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