淘汰の国のアリス | ナノ

しかしハートの女王は眉尻を上げて低い声で
「妾より先に…しかも大変とぬかしおる…!」
と呟いた。

そしてその後、突然女王は大きな声で言い放つ
「無礼じゃ!!そやつの首をはねてしまえッ!!」

アリスは急な態度の変貌と城の中に響き渡る怒りに満ちた声に驚いてびくっと肩をあげて信じられないと言わんばかりの不安な表情で女王を見上げた。ハートの女王は苛立ちで引き攣っている。一体どうしたのか、相手の気に障る事を言った覚えはないがその気迫に戸惑うしかなかった。後ろでは兵士達がややざわめいている。

レイチェルは顔色を青くさせ、フランネルは何を考えてるかわからない真顔で、様子を伺っているがハートの女王には何も言わなかった。言えないのかもしれない。フランネルはむしろ言っても無駄だと内心は諦めていた。

諦めていない人は一人。

シフォンは騒然としつつある周りにたいしてやけに冷静だった。

「お待ち下さい、女王陛下。」

アリスの後ろから一歩前まで歩み寄って庇うように右手を横に広げる。ハートの女王は鋭い目つきで睨みつけた。
「なんだ?…帽子屋か。」
しかし一切ひるむ事はない。二人はこのやり取りを慣れているようにも見えた。

「お話を聞いた所によりますと、今も「お仕事」が立て込んでいるようですね?それに貴方から逢いたいとおっしゃるには「それ以外に」何かあるのでは?」

シフォンは余裕の笑みすら浮かべている。そこにいるアリスを除いた全員の視線は玉座に集められる。アリスは胸元を両手で握り心配そうにその背中を見守っていた。自分はもうこの人物に頼るしかないのだろうと心に思いもしながら。





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