淘汰の国のアリス | ナノ

「アリスが来ておるというのに何故妾はこのような野暮用に…」
「仕方のない事です女王陛下。あの方は物語では重要な役割でしたから…」

声がしたのはアリス達の前方。奥には絨毯が角に沿って敷かれている黄金の階段の上に玉座がある。その玉座には一人の女性が肘をついて何か不満げな顔をしていたが、その会話の内容からは客の来訪とは別の事でもめているようだ。

「…もしかして、あの方が…」
アリスは前方を横目で一瞥しながらシフォンに耳打ちした。
「そうさ。この国の1番偉い人だよ。」

やがてそのすぐ近くまでアリス達はやってきた。頭の上にはバラの花を飾った大きな冠、よく童話に出てくる王様が身につけているような真っ赤なローブを羽織っている。ドレスは所々にバラやトランプのマークをあしらった赤と黒を基調にした非常に豪華な作り。首元や腕には黄金に輝く鎧から取ってつけたような物を装備している。王族に相応しい身なりと圧倒的な存在感にアリスは息を呑んだ。


「…ようこそ淘汰の国へ、そして我がハートの城へ。よくぞここまで来てくれた。歓迎しよう。」
見下ろしているその顔は無表情だが最初見た時よりは穏やかだ。
「…あ、私はアリス=プレザンス=リデルと申すものです。」
アリスはスカートの裾をつまんで深く頭を下げて自分の精一杯の礼儀を表現した。それ以外の客はアリスの少し後ろでその様子を無言で見守っていた。

「……………………。」

シフォンは難しい顔を浮かべている。

「この度はお招きいただき大変光栄でございます。この国を訪れてからは貴方の噂を耳に挟み、私からも是非逢いたいと思っていました。」
14歳の少女にしては十分すぎる丁寧な対応だ。そこは普段からの教養の深さと身分の高さを伺わせる。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -