庭も広ければ中もそれ相応に広かった。そして派手だった。
まずは天井。視界に映らないので見上げてみれば、誰がどう建てたのだろうと思うぐらいとてつもなく高くずっと見ていたら首が痛くなる。均等な間隔を空けて照明に負けじと輝くシャンデリアがぶら下がっていた。
壁はクリーム色で薄いピンクのバラの模様が描かれている。その可愛らしさに金色の枠で囲まれたドアや窓のおかげで高貴な雰囲気を醸し出していた。真ん中には四人が横に並んでも十分な余裕があるぐらい広い深紅の絨毯が敷かれている。それを挟むように数メートルおきに兵士が無表情で向き合って立っている。
やはり城とだけあってただ快く歓迎してくれるようではないようだ。それはこの絨毯を進んでいる招かれた客達にもひしひしと伝わってくる。
アリス達はあまりの空気の違いに言葉が出ない。
「………お城ってやっぱりこんな感じなのね。」
「………こんな感じなんだな。」
「こんな感じだ。」
フランネル以外の三人が周りに感づかれないように、気付かれても怪しまれないように、小声で会話をした…が曖昧すぎて「こんな感じ」がどんな感じかお互いわかっていない。
しかしそんなひっそりした感じで話す皆を無視してフランネルが大きなあくびをしてから呟く。
「……7番と5番……」
「…ん?ああ、さっきの二人か。」
好奇心旺盛な少女とうさ耳の子供みたいな青年が城の内装に夢中なのに比べ見飽きた様子のシフォンは先程の門番を思い出したが興味はなさそうだ。
「どうかしたのか?」
「……今まで何度も…同じような光景……でも……」
まどろっこしい話し方に多少の苛立ちを覚えながらも表情を変えない。
「…でも、なんだい?」
「……なんだか……あんなに生き生きしてたの………私、初めて見たわ……」
それを聞いたシフォンは確かに少しの違和感を感じていた。しかしそれもたいしたことないとため息をついた。
「はぁ〜…何かいい事でもあったんだろ、どうせ…」
「………………。」
それ以上フランネルは何も言うことなく黙って1番後ろをついていった。
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