淘汰の国のアリス | ナノ

全て開くまで見ていたアリス達に「さあどうぞ」と7番は急かした。華やかなアーチが囲む道を兵士と四人がゆっくりと歩く。

「しかしアリスという身分は相変わらず便利だな」
早くも食べ終えたシフォンがさりげなく皮肉を言うので膨れっ面になって
「アリスは身分じゃないわ。名前よ!」
と言い返してそっぽ向いた。

広すぎる庭のど真ん中を歩いてしばらくするとハートの城がはっきりと見えてきた。またもやアリスは口を開けて目を丸くする。

「私こんな豪華なお城初めて見たわ…」

近くなるにつれ存在感に圧倒されそうになるのに目の前まで来ればそれはもはや圧迫感さえ放っていた。

とにかく大きい。普段見る建物なんか沢山収まってしまうぐらいには巨大だ。外壁だと言うのに汚れ一つない白亜の壁に、城を構築する柱や派手な装飾やこりにこった窓枠等の部品は全て黄金に輝いており、屋根は空の中にくどい程映える深紅に塗られている。中央の窓にはハートのステンドグラスがはめてある。色調はほぼ赤、白、そして金とシンプルにまとめられているにも関わらず、細部にまで渡った飾りで全く地味とは感じさせない。

アリスはそもそも城というものを間近に見たことがなかった。しかしこれ程の物はめったにはないだろうと城を見上げながらしみじみと思う。

「なんだかアリスってだけで入れちゃったけど、私みたいなのが入っていいのかしら?」
「ええ!女王が首を長く…いやもう早く会いたいと待ち侘びてますよ!!」
この国では多少特別な扱いを受けるものの、一人のごくごく一般民なのだからそう思うのは当然だ。

「いやー!やっぱりアリスがいると助かるぜ。なあ?」
そう爽やかな笑顔で言うレイチェルと何か言い足そうにこちらを横目で見てくるシフォンに腹を立てたアリスは大股で城に入っていく。

「ちょ、おい待ってくれよ!俺は別にそんなつもりじゃねえって!」
その後をレイチェルが慌てて追いかけていった。





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