淘汰の国のアリス | ナノ

その臭いに耐えられず鼻を塞ぐ。もう見てもいられない。当たり前だ。アリスの身体は寒さでも何でもない何かで震えている。

「…ほら、これが真実の雨です!隠していた物を綺麗さっぱり流してしまう!…ああ、少し早かった!生きた心地がしませんねえ!」
そうジャックは両手を広げて空を仰いで叫んだ。とても清々しい笑顔だ!その様子をただ見つめることしか出来ないアリスは力の無いか細い声で尋ねた。

「…ジャック…」
「なんでしょうか!アリス!どうでしょう!アリス!洗いざらい流され醜い部分を晒されるこの滑稽な様を!!」
「……………」

そうか。恐らくこれがジャックの本当の姿なのだろうかと傍観した。こんな物を見ても何とも心に感じない、そんな人間なのか。逆にそれを見ればアリスは自分がとても弱い人間なのかと、気力そのものまで雨と一緒に削がれるような感覚に襲われる。しかしアリスは、この大量に散らばるソレをしっかりと目に焼き付けて涙として流れ落ちないようにぐっとこらえて力一杯叫ぶように聞いた。雨でも聞こえるように。


「…この人達…どうしてこんな事になったの…?何があってこんな酷い目に!!」
「…そうですねぇ。…こいつらはアリスになれなかったつまりなり損ないってやつです。」

「…なんで…すって?」

アリスは目を見開いた。

ここにゴミのように散らばっている人達皆が、今の自分と同じようにかつてアリスを目指していた者なのだと彼は言う。

確かに見る限りは自分と似たような少女、少女、少女、少女!

少女しかいないではないか!


「アリスになるかどうかは最終的には女王が決めるんですよ。んで、アリスと認めてもらえない場合はつまり…………こうなります。」
ジャックは人差し指をアリスの首元に当てる。

「首をはねよ!つって。いらなくなった玩具…いや、アリスはこうやって誰にもつかない所に誰にも見届けられず捨てられる。」
するとジャックは服の後ろから取り出したピエロの様な仮面をつける。その最後にみた表情は、ニッコリとした不気味なぐらいの笑顔だった。





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