淘汰の国のアリス | ナノ

「おっと、あまり下手な事言ったら危ない危ない…」
わざとらしく長い袖で口元をおさえて人形を気味悪そうに見下ろした。

「いい心地はしませんね。こんなゴミ捨て場早く抜けちゃいましょう。」
「そうね。」
しばらく続く道を人形に囲まれながら進んだ。




ポッ…


「………?」
アリスが急に立ち止まる。
「どうかしましたか?」
「…今、なんか上から落ちて…」

ポッ、ポツッ

何もない遥か空から冷たいモノがアリスの頭の上に落ちてきた。次第にそれの数がどんどん増える。やがてそれがこの森全体に降り注いだ。二人はすぐにそれを雨だと理解した。

「雨だわ!」
「この森が暗いのは空が曇ってたのもあったみたいですが…ちょっと早い気もします…」
「どっか雨宿り…!」
辺りを見渡しても雨宿りする場所もない。沢山繁っている葉っぱも雫の重さに耐えられず、またはその間から摺り抜けるため結局の所意味はない。

雨は徐々に勢いを増し、元から涼しい場所だったので余計に肌寒くなる。服は水分を吸って重たくなってゆく。

「…困りましたねえ…雨が降ってしまいましたね…。真実の雨が降ってしまいましたよ。」
ジャックは相変わらず呑気だ。アリスは雨音と顔に滴る雫を拭うのに必死ではっきり聞き取れなかった。

「呑気な事を言ってる場合じゃないわよ!風邪引いちゃうわ!」
「あー…困った困った。」
だが何故か、帽子のつばから覗くジャックの口元は吊り上がっている。

「…ジャックさん?」
不審に感じたそっと覗きこんだ。
「…雨は余計なモノまで流してしまいますから嫌なんですよぉ〜…」


そう言うジャックは足元にある人形を力一杯踏みにじった。





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