淘汰の国のアリス | ナノ

だがアリスは違うパターンを知らなかった

「信じてもらえてないなら信じてもらえばいい…中には例外という奴もいましてねえ」
「信じてもらえば…?」
「そうそう、そういう奴もいますよ。アリスは諦めも早いですねえ。」

不思議なことに少しだけ雰囲気が和やかになったような気がした。

「…余談ではありますが好かれたいのならまず人と自分を好きになる事ですよ、アリス。これ、試験に出ますから。」
ジャックはくるりと振り返る。出会った時より穏やかな笑顔だった。
「試験…?ていうか、自分も好きになるの?」
「それぐらい大事ってことですよ。まあアリスなら大丈夫ですね。猫にまた会ったら伝えといて下さい、気が向いたら。」

あまりの態度の変わりようにびっくりしているアリスも、何やらひとつ変な誤解をされているみたいでムキになって言い返す。
「…私なら大丈夫って…嬉しいけど私自分大好きなんかじゃないわ!」
「おやおや、アリスは自分が好きじゃないのですか?人間なんてみんな自分が可愛くて可愛くて仕方ないものだと思ってましたが…」

ちなみにジャックも人間である。

「…そうだとしても言うもんじゃないわ!あなただって人間でしょ!?」
「俺はトランプな…まあそうですね。だから自分大好き人間です。それでも俺は自分の事が大嫌いです。」

失礼ながら全くそのような雰囲気がなかったのでかなり意外だった。

「自分の事が嫌いなの。」
「…ええ。自分の事が大好きで大好きで仕方ない自分がこれ程なく大嫌いです。」
「…???」
全く反対の意味の言葉を羅列されて混乱するアリスをまるで自嘲するような笑みでこう言った。

「だから俺は嫌われても仕方ないし、好かれても面倒ですから。」
「………………。」

果たして、そんなのでいいのだろうか。そんな事を言おうとした瞬間、足に何か違和感を感じて立ち止まった。





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