「…私達は出口に近づいているのね?」
「はい、手応えはある感じですかねえ」
希望をわずかに感じたアリスの声は先程より幾分と明るみを増した。ジャックは後ろを歩く少女のことをさほど気にすることなく枯れ葉だらけの地面を踏んでゆく。
「…………………。」
「……どうしましたか?」
真っすぐ突き刺さるような視線を感じたジャックはそっと振り返る。
「………いや、なんでもないわ。」
「なんでもないような目ではないでしょう…。」
「うっ…」
図星だった。
「なんとなくだけど、ジャックさんって猫さんに似てる気がするの。」
「猫さん?…あー、チェシャ猫とやらですか。この国には猫はあいつしかいませんからねぇ。」
ジャックはすぐさまアリスが誰を指しているかわかった。どうやら猫はこの国には一匹しかいないらしい。アリスはチェシャ猫に希少価値どころか有り難さと「一匹だけだなんて!」という猫好き故の絶望感に駆られた。
「んで、なんで俺が猫に似ていると?」
アリスはクスリと笑う。
「…気配なしに突然出てくる所とか、脳天気な所とか。…雰囲気かしら。何となくだけど似ているわ。」
ジャックは「うーん…」と唸る。
「あ、私の勝手な思い込みだから…」
「わからなくはないですかねー…でもあんなに嫌われるのは鑑別です」
「嫌われ者…?猫さんが?」
チェシャ猫とはある程度会話を交わした程度だが、あんなにと言われるほど嫌われるようにはとても見えない。強いて言うならばあの体質はとても厄介だからなるべく敵に回したくないのもあるだろう。しかし、人格的には嫌われる要素は持ってないはずだ。
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