淘汰の国のアリス | ナノ

「うん、当然!樹しかないもの。」
「海は泳げる人は溺れない。しかし樹海は入ったら最後、抜けられないですしねえ」
アリスはそれを聞いて一気に不安になった。

「…抜けられない!?…私達はどうなるの!?」
「ここでのたれ死にますね、確実に。」

「―――…!?そ、そんな!!!」

その場で立ちすくんだ。今まで堪えてきた感情が荒ぶる波のように込み上げてきそうな、目頭が熱を帯びる。

「…嫌だ…死にたくない!…帰らなきゃ…私は帰らなきゃいけないのに!……こっ…こんな所で…!」

しかし何故だろう

涙が出てこないのだ。

「君が俺らの全然知らない場所から来たのはわかってるし、帰りたいのもわかる。だけど帰るには君が「アリス」にならなきゃいけないんですよ。」
やれやれと肩をすくめジャックは苦笑いを浮かべる。そしてまたこう続けた。

「…この森はですね「心に迷いの」ある人を閉じ込める森」…なんですよ。辛気臭いでしょ?なんでそんなのあるか俺もわからないし、あはは」

最初真剣な表情で話すも段々くだけたような、どうでもいいようなもはや投げやりだ。

「…なんでそんな適当なのよ!!」
アリスの反応は正しい。

「あのね、「アリス」になったら君は用済みになるわけだからもう帰れるんですよ。」
「………え、そうなの…ってことは…」

―帰ってきて!アリスちゃん!―

刹那、どこかで聞き慣れた懐かしい声と

―その気持ちを、どうか忘れないで―

知らない声が耳を割り込んで入ってきた。



「心に迷いのない信念を持った者には自然に道が開ける…まさしく女王が作ったような場所ですねぇ。ま、俺は迷うようなこともないですけれど。」

「………はっ、…そうよ、私は帰らなくちゃ。そのためにはアリスになるのよ…!」

空耳に気をとられていたアリスは自分に言い聞かせるように。その様子を見て一安心したジャックは「なら急ごう」と言って一歩前を歩いた。




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