淘汰の国のアリス | ナノ


だがアリスの心は不安でいっぱいだった。空から見ただけで広大に広がる森の中をあてもなく歩くほど無謀なことを今しているのだ。色々な心配していることが一気に込み上げてくる。

「……うぅ…」

湿った地面を歩く。

しかし弱音は吐かなかった。


「…進まなくちゃ…とりあえず…。私には進むしかないの…」

ここで弱音を吐いても仕方ないし、吐いても気分が沈むだけで馬鹿馬鹿しいと諦めていた。足取りは弱々しいが、しっかりと歩みを進めた。


「……ようこそ、樹海へ」

細々と、低い声が聞こえた。だがそれも本当に小さな声なのでスルーした。

「気のせいね…」
「…そう、樹のせいで俺がわからないでしょう」


「……誰?」

アリスは立ち止まり後ろを振り向いた。勿論、人の気配など何もない。

「ハイド アンド シークつって、俺を探してごらん。」
まるで悪戯に人をからかうような挑戦的な言葉に苛立ったアリスはそれをぶつけるように叫んだ。
「二人でかくれんぼなんかつまらないじゃない!!!」



「…あーそっかぁ。そうですよね。そういうのは嫌ですもんねぇ〜。」
謎の声の主は、アリスの向こうの方の樹から姿を現した。赤、黒を基調とした全体的にゆったりとした服を身に纏い、所々に鮮やかな金色の装飾をあしらっている。帽子から流れる銀色の長い髪。ただ不気味な違和感を感じたのは、顔がうかがえない。ピエロのような白塗りの仮面をつけていたからだ。

ローブを引きずりながらゆっくりと歩み寄ってくる度に警戒心が増してゆく。謎の人物はスの前で立ち止まり、仮面に手を伸ばすとそれを外した。中性的で整った端整な顔立ちは優しい微笑みを浮かべている。

どことなくだが、アリスの「大切な人」に似ていた

「俺はジャック。ハートの女王様の召し使いでして…ちょっとある用事でこんなしょうもない所をあてもなくふらふらしてたんですよ…。」

先程までの気味の悪い雰囲気はなく、穏やかで優しそうな青年だ。やっと誰かに会えた、しかしこんな所に何の用があって来たのだろうと疑いの目を向けるアリス。ジャックは既にそれを見透かしている。笑顔でこう言った。


「アリス、貴方を我等が女王の城へ招待する。それが俺の役目ですから」





―――――……


一方、あちらこちらで話は勝手に進み出したのだった。







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