「すっごーーーい!!」
風を全身で受け止めながら、むしろ自分が風と一体化しているような感覚。向かい風を押して進む。何も邪魔する物がない空間をただひたすら。
つまり空を飛んでいるのだ。
しかも鳥に乗って!
「何もなければ城にはすぐ着くぞ。思う存分堪能しておくとよい。」
「…もう最高!みんなに自慢してやるわ!」
自慢したところで信じてくれるかはわからないが、アリスは今のことを誰かに話したくて話したくて仕方なかった。
「下はどんな風になってるのかしら…」
羽に手を伸ばし少し顔を覗き込んだ。
下は沢山の木々が流れて深い緑一面がずっと広がっていた。いつの間に海からここまで来たのだろう。確かにこんな長く続く森を歩いてどこに出るかわからず迷ったところではどうしようもない。非常に助かる。森には自分達だろう、小さな黒い影が滑るように流れる。逆に止まっているようにも見えた。
「本当にすごい…!あっという間ね。」
「…………む?アレは…?」
アリスが下の景色に夢中な頃、フィッソンは何かを見つけたのか少し速度を落とした。
「……どうかしたの?」
「…何かがこちらに向かっておる。」
スピードを緩めたにも関わらず、それは段々とこちらに近づいてくる。フィッソンはしまいにはその場で翼でバランスをとり停止した。
「……アレは!?なぜだ…、なぜアイツらが…!!」
徐々にせまりくるのは、それはもう大量の黒い小さな空を飛ぶ鴉の群れだった。アリスは疑いはしたもののさほど驚くことではない。しかしフィッソンは甲高い警戒の鳴き声をあげる。
「…問おう、なぜここにいる?…貴様らは「鏡の国」の民であろう!!」
「………鏡の国?
すると鴉の内の一羽が前に出てこちらに向かって喚き出した。
「お前の友もアタシの兄ものうのうと暮らしてるわ!」
「我の問いに答えよ!!」
鴉の群れがギャーギャー鳴き始める。
「残念だけどアタシもわからないの!…アンタの背中に乗せてるの………ふうん!アンタも堕ちたもんだわ!!」
すると後ろからもまた大量の鴉が飛んできて目の前には黒い壁が出来た。
「…ついでだから教えてあげる!守るモノがある奴が強いのか、そうでないのか!!そして全てを知ってお前はそのまま堕ちろ!!」
それが合図のように、いっせいに黒い壁が煙のようにこちらに向かって飛んできた。
「…何!?こちらに来るわ!」
「くっ…一旦引き返すぞ!」
そう言って身を翻そうとした、だが群れの一部がすでに周りを取り囲む。その時だ。
「きゃっ…」
関空なく襲いかかってきた鴉にバランスを崩したアリスの身体がぐらりと傾き、そしてそのまま支えるものも何もない空間でアリスは真っ逆さまに落ちてしまった。
「きゃあああああああああ!!」
「アリス…!!?」
アリス森に吸い込まれるように落下していった。
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