淘汰の国のアリス | ナノ


この国にきてからまともなモノに出会ったためしがないからちょっとやそっとの事では驚かなかった。まさか、空想でしか見られないその姿に改めてこの国が何なのかさっぱりだ。もはやファンタジーである。

「…私が…これに…」
息を呑むアリス。

「どうした。早く乗らぬか。こんな所で晒し者にされたままはつまらんぞ」
(そういう問題でもないが)そんなアリスを元人間は急かし立て、ゆっくりと脚を畳んだ。砂の上に胴体が浮かんでいるようだ。

「…うぅ、うん…」

アリスは腕を伸ばしまるで崖を登るかのように足を上げて「よいしょっ」とようやく背中を跨ぐ。
空からの光を帯びてより金色に輝き、細い毛が風に靡く。毛ざわりはもう、質の良い絨毯のようだ。やはり幻覚でも空想でも何でもない。しかもアリスはまず鳥を肩に乗せることはあっても、鳥の背に乗ることなどない。貴重にも一生味わえない体験をしている。しかも何の鳥かと問われればそれは不死鳥なのだから。

「……………………」

もう言葉すら出ない。羽がゆっくりと動く。

「………あ!ウミガメさんは乗らないの?」

視線の先には岩場まで離れてこちらを心配そうに見上げているエヴェリンの姿がいた。アリスからでは小さく、影の中にいるせいではっきりと見えにくい。

「あー…いいです!僕高いところほんと無理なんで…!」

海の生き物はまず空とは無縁なのだろう。

「へー…。きゃっ…!?」
すると大きな翼がはためき、それは徐々に勢いを増している。周りは風で砂がかすかに舞い、少しだけ、アリスは浮遊感を感じた。

「では行くぞ。しっかりとつかまっておれ。」
「…………え…?う、うわ…―――」

アリス達は一瞬にして、空に流れる風となった。






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