「…アリスよ。しかしこの国でお主はどっちつかずの存在である。嫌な気はしないか?自分をアリスだと認めてくれるならそうしたいとは思わぬか?」
「そうね…やっぱり中途半端はいやだわ!」
だが、名前以外に自らを証明させる物は何もない。チェシャ猫と一度そのような話をしたことがあるが結局はっきりとした結論はでないままだった。
「ならば、一つ方法がある。」
さっきからフィッソンがひとりで話している中、エヴェリンは気まずい表情を浮かべ目線を反らしている。
「なあに?」
「…決して楽な道ではないぞ?」
「ええ、構わないわ!」
アリスの覚悟はできていた。少し間を置いて真剣な面持ちで言った。
「この先に淘汰の国の女王がいる。そやつをお主が倒すのだ。」
「え、倒すって?私が!?」
アリスは素っ頓狂な声をあげた。突然知らない人を倒せと言われているようなものなのだから。
「そんなの無理よ!できないわ!!」
「…いきなり言われたらそうなるでしょうね…。」
しかし構わずフィッソンは今度は笑顔だ。人を不安にしかさせない笑顔だ。
「まあなーに、会えばなんとなくそうしたくなるであろう!我もうかつに下手な事は言えぬからな。」
「………………。」
人物像も知らない人を実際会ったからといってそうなるものかとアリスは目の前の人物をどう思えばいいのかわからないで疑いの目しか向けられない。それに
「海……しか見えないじゃない。」
周り一面海だ。
「どこにいるの?」
「海の彼方だ。」
「…そう!なら船は!?」
「そんなのないです…」
「……………。」
アリスはどうしていいかわからず混乱している。だが目の前には海など手慣れたウミガメもどきがいた!
「ウミガメさん!貴方なら私を乗せて泳いでいけるんじゃあ…!」
「何言ってるんですか!?無理です無茶です無謀です!沈みます!!」
「…さすがもどきね…」
「そうじゃな」
アリスの辛辣な言葉とフィッソンの悪気ない独り言に残念なウミガメは「ひえぇ」としまいには涙を浮かべていた。
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