淘汰の国のアリス | ナノ


そこは、白い壁が円を描いて覆っており四方八方に扉がついてるが大きさはバラバラで小さいものは足元から膝までしかなく大きいものは自分の遥か上まであった。天井は高く、まるで巨大な筒の中にいるみたいだ。穴という穴はなかった。

「…!?なんで?穴が…ない?」

何が起こったかわからない顔で天井を見上げていると、後ろの方から高い足音が聞こえてきた。振り返ると、そこには自分より少し年下ぐらいの小柄な少年が近寄ってくる。赤いチョッキに首から提げた金色の懐中電灯と、あの白ウサギとどこか似たような服装をしている。それどころかピンク色の丸い瞳に頭部から生えたものは獣の、白い兎の耳だった。

最初は飾り物かと疑うものの、近くで見る度に本物とそっくりで、思わず直接触れて確かめたくなるほどの毛並みだ。アリスはその耳に釘付けになっていて少年がすぐ目の前まで来ていた事に気付かなかった。

「…君。」
「はいいっ!!」
いきなり近くから声がしたものだからびっくりして肩を上げた。少年の声もやはり、白ウサギな声たったが姿があまりにも「近い」ので今だに同一人物だと認める事はできず、ちらちらとリアルな獣の耳と人間そのものの顔を交互に見ている。

「…さっきから僕の耳とかばかり見ているが…」
「あの…あなたは…白ウサギさんですよね?」
恐る恐る尋ねた声に耳がわずかに動いた。
「いかにも。逆に何だと思ったんだ」
髪の毛が邪魔だが確かに頭からソレは生えている。
「…う、宇宙人…」
アリスがそう言った瞬間耳が垂直に立った。実際に兎という動物にそこまで触れ合った事がないが果たしてこんなに感情に合わせて激しく動くものだったのだろうかと相変わらず忙しなく動くうさ耳を見ていた。

「だって…人間が動物の耳を生やしているなんてありえないもの!おかしいわ!!」
「僕はウサギだ!ウサギがウサギの耳を生やして何がおかしいと言うのだ!」
「耳以外は人間と変わりないじゃない!」
「不思議の国ではこれもウサギなんだよ!!!」

むきになって言い返してしまったがそれを言われては何も反論できなかった。悔しそうに口をぎゅっと閉じるアリスにさすがの少年もため息つきながらこれ以上何も言わなかった。耳はやや下に下がる。




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