淘汰の国のアリス | ナノ

「………ちゃん………して…」

「ん?人の声だわ」

貝殻からは波の音に紛れながら女性の声が聞こえてきた。不思議に思いもっと耳に近づけてみた。
「……気のせい…?」

「…きて………アリスちゃん!」
「ぶえっくしゅん!!!」
「うわあぁ!」

突然岩場の向こうから誰かがそれはそれは大きなくしゃみをするものだからアリスの集中力もあっけなく切れた上に貝殻を落として瞬く間に砂に隠れてしまった。

「ああ〜!!貝殻が〜!」
何もない砂浜にむなしく叫ぶ。そんな時、岩場からくしゃみの主が覗き込んだ。

「……あのぉ〜…す、すいません…ついその…」
ベレー帽子を被った地味な顔の少年だ。しかしアリスはその少年を睨みつける。
「ひ、ひええぇ」
目が合った瞬間肩を跳ね上がらせ岩場にすばやく隠れてしまった。大分臆病者なのか、しばらくそこから出てこない所か「すみませぇん…」や「怖いよぉ…」など震えた小さな声で呟いている。

「……………。」
さすがにその様を見て憐れに感じたアリスはそっと後ろに立って落ち着いた声で話しかけた。

「…えっと…気にしてないから…。」
「ひゃああああいつのまおうっ!!?」
下が砂なので足音が自然に掻き消されただけで本人に驚かそうという気持ちは全くなかった。岩に張り付くような少年は頭だけ振り向けば後頭部が直撃し悲鳴をあげてその場で悶絶している。
どうしたらいいかわからないのでとりあえず声をかけた。

「…大丈夫?」
「…はい!嗚呼、こんな自分めの心配をして下さるとはなんとかたじけないことか…!」
慌てて体ごと振り向いて二度三度頭を下げる。…臆病というか謙虚なのか、その気持ちはまあ嬉しいのだが後ろに背負っている大きなリュックが岩に引っ掛かって深く頭を下げる勢いで浅く下げていた。





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