「今日こそ僕の胃袋に収まってもらうよ眠りネズミ!!!」
「窮鼠猫を噛むっていう言葉を知っているか猫もどき!!!」
チェシャ猫は一人称が、フランネルに至っては口調がもう荒くなっている。これが猫とネズミの繰り広げる死闘なのか。そして敗れたネズミはアリスの飼い猫が捕まえてくるように…だがこのネズミならなんとかなりそうな気がするぐらいには、さっきから互角に戦っている。
しまいには食器は粉々に砕けてお茶会とはとても言えない、もはや戦場と成り果てていた。幸いにもアリスやシフォンのいる範囲までには及んでいないが、相当うるさい。
「………てめーら……!いい加減にしやがれッ!!」
しびれを切らしたレイチェルは立ち上がり二人を止めに向かった…だが何を思ったかまだ紅茶の入ったポットやカップを投げつけた(本人は止めているつもりである)。
「…三月さん!?」
「…温いソレじゃあ頭は冷やせないだろ…。」
シフォンは呆れて獣の争いを遠めで眺めながら言った。なるほど、頭を冷やしてもらおうとしてるのか。だが頭に当たってるわけでもなく、紅茶は中途半端な温さで、これでは火に油ならぬ火にぬるま湯だ。
「止めなくていいの!?」
アリスは向こうを指差す。しかしシフォンは
「好きにやらせておけ。僕にまで被害が来なければ問題ない。」
「………………。」
さっきアリスを安心させた言葉は今度は一気に不安にさせる。
ザクッ
「………………あ。」
「…………………。」
フォークが勢いよく飛んできて、シフォンの帽子に突き刺さった。アリスの血の気は引き、シフォンは目を閉じてそっと立ち上がる。
「………帽子屋…さん…?」
恐々と尋ねた相手は冷たい無表情で、目は殺気立っていた。
「……僕の時間を邪魔する奴は許さない……。」
帽子を傷物にされたことではなく優雅なひと時を目茶苦茶にされたことに怒りを覚えた。シフォンは椅子の後ろに立てかけてあった杖を手に取る。
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