そして少し離れたテーブルの上に素早く飛び上がりその衝撃でアリスの周りの食器まで僅かに跳ねた。
「ヤマネさん!!?」
「…どうしたフラン…あっ!さてはアイツだな!?」
途端にレイチェルも手当たり次第にスプーンやフォークを掴んで威嚇する。一体何が起こったのかわからず困惑するアリスに対し、シフォンは呑気に二杯目の紅茶を嗜んでいた。
その時だ。
「先に行っちゃうなんてひどいなー…なんて。」
気配もなく、なんとフランネルの後ろのテーブルにチェシャ猫が生首が生えていたのだ!
「…猫さん…そんな芸もできるのね!!!」
「…ゲイ?…なーにそれ。」
アリスはチェシャ猫の特異体質を目の当たりにしているが、これはさすがに驚愕どころか恐怖だ!フランネルは身軽に振り返れば力を込めてチェシャ猫めがけてフォークを突き立てる。だが生首は一瞬で姿を消し、フォークはドスッと音をたてテーブルに真っすぐ刺さった。
「猫は美味しくないよ。…君と違ってねッ!!」
今度は全身姿を現した。長い袖から見える鋭く尖ったもの…鉤爪でフランネルの背後に回り首を引っ掻こうとしたがフランネルは軽々とジャンプでかわしてチェシャ猫の顎を狙って回し蹴りを一発食らわす。
「…………………………。」
アリスは唖然とした。
眠りネズミとは言い難い身の軽さとその野性剥き出しで近寄るとこちらまで攻撃しかねないぐらい凶暴。一方のチェシャ猫は今までに見たことのないぐらい恍惚な、獲物を狙う時のような輝いた目をしている。気取った様子はどこへやら。
猫とネズミ。多分皆が親しんでいる「不思議の国のアリス」からのイメージからは程遠い、弱肉強食を形にしたような光景だ。
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