アリスは真剣な顔で答えた。
「ごめんなさい、でも私の居場所はここじゃないの。」
「アリス……。」
レイチェルは驚いて、フランネルは感情が読み取れない無表情でこちらを見ている。
「………そうか。」
低く小さく、しかしはっきりとそう言ったシフォンは帽子のつばに隠れて表情が伺えない。アリスは途端に慌て出す。
「あっ、あのごめんなさい!嬉しいのは山々なんだけど…!」
だがふと顔を上げ帽子から覗かせたその表情は、笑顔だった。
「……いや、いいんだ。君がそうしたいならそれでいいよ。」
「……帽子屋さん…」
一安心したような、どこか不安な気持ちのアリスを横目にレイチェルは間に割って問いかけた。
「ほんとにいいのか?わざわざ聞いたのによ。」
「ああ。彼女は僕らと違って、帰るべき場所がある。引き止めるのは無粋だ。」
「…でも…。」
それ以上はあえて何も言わなかった。
「来たい時はまたくればいいさ。この国は空想なんかではない。」そう優しく言うシフォンに、この国ではおそらく一番理解力があり、自分のいる世界にいてもおかしくないぐらい常識的で、これ程になく安心感を持てる人物ではなかろうかとアリスはなんとなく雰囲気が似ている人物…ピンクのドレスを着た少女の姿を重ねた。
「…ま、そーだな。生きてる限りは会えるんだからいーってことで!な?」
レイチェルは隣に座るアリスの頭を無茶苦茶に撫でる。緩いウェーブのブロンドの髪が乱れて頭まで揺れる。だが、アリスの顔は、見ている方が幸せになるぐらい嬉しそうな笑顔だ!
「……この子なら……、なッ!?」
ガタンッ
と寝言のように呟くフランネルが突然椅子が倒れるぐらい勢いよく立ち上がった。そこにいた者全員が驚いて一方を見れば更に驚愕する。今までずっと寝ぼけ眼だったフランネルは、眉を寄せ、いきり立ったような酷い剣幕だったのだ。
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