淘汰の国のアリス | ナノ


「そうだ、アリス。この国はどうだい?」
シフォンが唐突にアリスに聞いた。

「…うーん…最初は大変なことばかりだったけど、とても楽しいわ!」
それを聞けば、シフォンはこれ程にない穏やかな表情を浮かべた。隣でレイチェルは二人の会話を小耳にしながらケーキにがっついている。

「…それはよかった。…ならば僕から一つ提案がある。」
アリスとレイチェルが顔を上げた。シフォンはそんな二人を一瞥してカップの残りの紅茶を飲み干して優しい落ち着いた声で尋ねた。

「…アリス。どうだ、気に入ってくれたようならこの国に住んでみてはいかがかな?」
レイチェルは真顔でカップを落とし、アリスは目を丸くしてしばらく黙っていたがすぐに口元をおさえ軽くパニックになりかけた。

「ええ!!?ちょっ、ちょっと!なんでそうなるの!?」
「そ、そうだよ!いくらなんでも急すぎるぜ!!」
慌てふためくアリス。レイチェルも黙ってはいられなかった。

「そうかな?いい提案だと思うのだがね。…慣れればもっと楽しくなるし、なにより君のいた世界で君を縛っていたものはここには何もない。素晴らしいではないか。」
シフォンはやけに大袈裟な身振りをする。

「………………。」

アリスは悩んだ。ここには自分を苦しめていた物は何一つない。宿題も、塾も、大人の複雑な事情に振り回されることも、堅苦しいマナーも一切気にしないで常識のない子供が夢見た童話の世界で暮らせるのならもう夢のようだ。もっとこの国を知りたい、冒険したいとも思っていた。希望に溢れた少女の心をつかみ取り離さないおとぎの国の虜になりつつある。


だが、アリスには帰るべき場所があるのだ。自分の帰りを待っている人達がいるのだ。

例えここが空想だとしても、アリスの居場所は不思議の国ではない。





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