「…レイチェル、客が来たんだ。何か出せ。」
「え、え…こんなにあるのに!?」
目の前の沢山のデザートを目の当たりにしてその中のどれかからでもよいのだろうかと疑問の混じった驚きの声を上げる。レイチェルは、アリスの席に置いてあるコップに紅茶を注いでその横に砂糖やらミルクやら置いてまたどこかへ行った。
「それぜーんぶ自分のだって言いたいんだろ…んげっ!」
からかうように呟いたレイチェルに向かって黒い塊のような焦げたスコーンが勢いよく飛んで見事後頭部にヒットした。投げたシフォンは腹立つ所か、真顔だ!
「いいから早く何か持ってこい!」
「…あの、私…その…、これが食べたいかなーって」
そっと、自分の近くにあるアップルパイを指差した。多分この場所に行く前に漂ってきた臭いは主にこれだろう、香ばしい香りが食欲をそそる。
「まあ君ならいいだろう。好きなだけ食べていくがいいさ」
シフォンは目の前の果物が盛られた鮮やかなケーキを慎重にナイフで自分の分だけ切り分けていた。アリスも側にあったフォークとナイフに手を伸ばしてサクッと軽そうな音を立てながら一口大に切った。
「いただきまーす…………。」
アリスは一旦そのまま固まった。ケーキではないが甘い物にはこの国ではろくな目に遭ってない。
「……バカが作ってんだから何も入ってないよ。」
安心していいのか、どうやらそのバカをさすレイチェルには聞こえてないようだ。疑心暗鬼に口に運んだ。
「………。んっ、んおいし〜い!!!」
思わず顔を綻ばせる。
「そりゃそうさ、まずいものを作らせてどうするんだい。」
シフォンの言葉を無視してアリスは次々と頬張る。手ぶらのレイチェルがそれはそれは嬉しそうだ。
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