「……あ、あの人なら…」
さっきからずっとテーブルに色々な物を運んでいる青年に声をかけることにした。
オレンジのやや無造作な髪は毛先が暗く色が落ちているようにも見える。頭からは野ウサギのような茶色の長い耳が生えていおり、瞳は真っ赤で丸い、細身ながら体格はしっかりしている。えんび服を身にまとい首元には赤い蝶リボンを締めていたのでチェシャ猫以上に人間らしい服を着ていた。
その青年は手にプレートの上に更にパイやらカップやらを載せてバランスを崩すことなく歩いている。
テーブルにはもういっぱいで二人…いや一人では食べきれないぐらいの数だが、思い切って青年に話しかけてみた。
「あ、あの!そこの…えーと…」
「んあ?」
プレートの物をテーブルに置いて空になった皿を載せながら振り向いた。
「…えっと…空いてる席は…」
「お前の座る席はねえ!!」
勢いよく断られた。今まででこれほどきっぱりと断られたことはない。潔さすら感じた。
「見た所沢山あるように見えるんだけど…。」
アリスは誰もいない沢山の椅子を見渡しながら呆然としている。
「…お前の席…ねえから……」
少女がぶつぶつ呟いた。寝言なのか、何気に話を聞いていたのか。しかしそのままテーブルに突っ伏して寝てしまった。
「……………………。」
まともそうな人には適当に返されるだの、断られるだの散々だ。おそらく他に誰か来るのか、そうだとすればこの沢山の品々も納得がいく。アリスは名残惜しそうにその場を後にしようとした。
「わー待って!待ってくれ!!」
今度は何も持ってない青年が慌てて駆け寄ってアリスの腕を掴んだ。
「!?」
先程とは打って変わって困ったような顔をしている。
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