淘汰の国のアリス | ナノ

少し間を置いてやや穏やかさのある声で続けた。
「そんな常識は不思議の国では全く意味がないよ」
それを聞くとアリスはしばらく黙りこんだ。さっきまでは恐怖と絶望でいっぱいだったのに、徐々にこの穴の向こうで待つ世界に期待で胸を膨らませている。

「…いつぞやのアリスは「不思議の国とか言ってほんとは天国なんでしょ」とか言ってたなあ…」

と白ウサギが呟いていたのを聞き逃してしまったアリスは聞き返そうとすると、落ちてからはほとんど見ることのなかった周りの景色をふと見た。見る余裕がなかったのだが穴の周りの壁はレンガ造りで、本棚があったり小さな扉があったりした。

一体こんな所に誰が出入りするのだらう。扉から出ていく人も危ない。また聞きたいことでいっぱいになった。

そして何もないスペースには沢山の貼り紙が貼ってあった。何か書いてあるのだがさすがにそこまで確認できるほど優れた動態視力は持ち合わせていない。
「なんて書いてあるのかしら…」

と呟くと、どこからか女の子の声が聞こえてきた。

「まあ、この子が次のアリス?」

「…?」

すると今度は声が様々な方向から一度に沢山と聞こえてきた。みんなバラバラのタイミングで好き放題喋っているのでひとつひとつを聞き分けるのは不可能だが、皆「アリス」の名前を言っているのは確かだ。

「……私の……が……アリスに相応しい…」
「あんな………アリスなんて………」
「また…………アリス………そう………」

落ちても落ちても絶え間無く聞こえる声はもはや雑踏と化し、うんざりしたアリスは大声で怒鳴った。


「一度に喋ったらわからないでしょ!!!」


その声は穴全体に響いた



次の瞬間

アリスは体に強い衝撃を受けた。



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