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それは、月の出ていない寒い夜のことでした。


「寒ッ…」


今日は一段と冷え込んでいる。マフラーを口元まで引き上げながら、私は今日のお昼ご飯を食べなかったことを激しく後悔していた。
めっちゃお腹すいたがな。節約やからってなんで昼抜いたんやろ…でもお腹がすくことは人間誰しもある生理現象やん?それはしゃーないと思うねん。

と誰に言い訳するでもなく、今にも背中とくっつきそうなお腹を擦りながら自宅へと続く道をのっそのっそと歩く。

あかん、ほんまお腹すいた死ぬ。


「ぐぅ…しぬ…しんでまう…あー…」


とうとう耐え切れずに道端にしゃがみこんでしまった私。あぁ…地元にいたころなら、仲が良かった鴉天狗あたりが饅頭とかお菓子くれるんやけどなぁ…

私、このままここで死ぬんやろか…
死因が空腹とかめっちゃダサいやん。そうはなりたくないけど…このままやったらそれが現実になりそうで怖いわ。


なんてアホなことを考えながら蹲っていると、足元が不意に暗く陰った。
マジか。ついに来たんか死神様のお迎えが!嘘やろ嫌やで空腹で死ぬとかッ!!死ぬならいっそ満腹の状態で死にたいわッ!!


「おい」

「あぁあ死神様勘弁してください私は空腹のまま死にとうないですわ…」

「……は?」


おおう。死神様が中々素っ頓狂な声を上げなすったぞ。透ちゃん驚愕。
この際誰でもええわ。私に食べ物恵んでくれるならその人はきっといい人や。多分。


「…大丈夫なのか?」

「死にそうです」

「!?お前、それならそうと早く…」

「お腹すきすぎて…」

「え」


顔を上げると、雲間から差し込む月光がその人物を照らしていた。冬にもかかわらず袖のない着物を着ていて、不思議なマフラーを巻いていて、無表情だけどどこか心配そうな顔をしたその人。今はぽかん、としてるけど。


「食べ物…恵んでくれませんか…」

「………」


彼の無言がとても痛かったです。






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