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『ぎぃい…ッ、あ゛あ゛ぁぁぁあああ…!!!』


けたたましい断末魔を上げながら私から離れた影は、少し離れたところでもんどりうっている。そして、突如入って来た大量の酸素に咳き込む私をそっと誰かが抱き起してくれた。

うっすらと目を開くと、私の顔を覗き込む双頭の青い蛇さん。そして。


「おろ、ちぃ…」

「全くお前は。今も昔も心配ばかりかけて…」


やっぱり、あの時の白い蛇さんはオロチやったんやね。その後私を助けてくれたもの。
その言葉で、私の中にあった変な違和感が全部消えた気がした。


「うん…ごめん…でも、おおきに…今も、小さい頃も…」


ふ、と笑ったオロチは、ぎゅっと私を抱きしめた後、すぐにコマさんを呼んだ。


「ここまで透を守ってくれてありがとう。感謝する」

「でもおら、何もできてないズラ…」

「そんなことはない。コマさんがいてくれたから、透は諦めずにここまで走れたんだ。…あとは、俺に任せてくれ」

「…わかったズラ」


私をコマさんに預け、オロチは未だ悶えている影に向かって歩いて行った。


『また…』

『またお前だ…』

『じゃまばかり』

『なぜ』

『どうして』


「なぜ?愚問だな。守りたいから守る。ただそれだけだ」


『おのれ…』

『ゆるさない』


「…初めは、透の祖母に頼まれたから見ていた。だが」





―「ぐぅ…しぬ…しんでまう…あー…」



―「あの…眠いです…」



―「おろッ…オロチやぁ…!!」



―「オロチのご飯は、いっつもおいしいな!」



―「いつもありがとう、オロチ」





「いつの間にか頼まれたからじゃなくて、心から透を守りたいと思うようになった。
………だから、貴様は今、ここで俺がケリをつける!!」


瞬間、オロチの雰囲気が変わった。妖気が大きく膨れ、腕や頬に鱗が浮き上がるとそれらが淡くエメラルドに輝いた。


『蛇の分際で…!』

『ゆるさない』

『ゆるさない』

『ゆるさない…!』


「以前は消し損ねたが、今度はもうそんな失態はしない。その体、塵一つ残さずに消してやる」


そして、オロチが放った力に、影の悲鳴を聞きながら私は強く目を瞑りコマさんを抱きしめたのだった。







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