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さぁ、みなさん。待ちに待った冬休みでございます。
だがしかし、学校が終わったからと言って必ずしも冬休み中が暇というわけではない。

そう、私にはバイトが待っていたのであった。
実は私、アッカンベーカリーでアルバイトしてましたテヘペロ。高校入学時からお世話になってます。


今はそのバイトの帰りで、街灯と家々の光が灯る夜道を自宅めがけててくてくと歩く。隣にはひょこひょこと着いてくる小さくて可愛いコマさん。
さっきそこの角で出会いました。ちょーかわええこの子。


「都会はやっぱもんげーズラ。夜でもこんなに明るくて、まるでお昼みたいズラ」

「せやねー。でもな、私の実家はこないに明るくなかったんよ?」

「え、透はおらみたいに田舎出身ズラか?」

「ううん、私は京都から出てきたんよ。京都事態は明るいんやけど、私ん家は神社やから周りはあんま明るくなかったんよ」

「そうだったズラか」

「うん」


なんとなく思い出した実家。今頃みんな何してるやろか。元気やとは思うけど…

不意にクンッと袖を引かれた感覚がして、コマさんを振り返る。


「コマさん?どうかしたん?」

「透、この道はだめズラ」

「え?」

「少し遠回りになるかもしれないズラが、でも断然あっちから家に帰った方がいいズラ!」

「ちょ、待ってコマさん!どうしたん?なんかあったん?」


どうしても早くここから私を遠ざけたいらしいコマさんに尋ねるも、彼は血相を変えて早く早く、と私を急かすだけであった。彼に袖を引かれるまま来た道を引き返す。
ふっと、何となく背後を振り返ってみた。そしてすぐに、見なければよかったと後悔した。


「透!!見ちゃだめズラ!!」


少し離れた場所にぽつん、と佇む黒い影。それを視界に入れた途端、私の足は地面に縫い付けられたかのように動かなくなってしまった。そして、それはゆっくりと顔を上げ、私を見るとにたり、と笑ったのだ。


『みつけた、みつけた』

『多紀の血を色濃く受け継いだやつ』

『こんなところにいた』

『小娘』

『待ってろ』

『今…』





『  食 べ て や る  』






「透!!」


コマさんの声にハッと我に返り、弾けるように走り出す。するとさっきの影も、何かをブツブツと呟きながら追ってきた。


『逃げられない、させない』


なんで…なんでなん?なんであいつがここにおるん?あれは、確かに消滅したはずやのに…!


「透、あいつはきっともう透の家も知ってるはずズラ!」

「そんな…!どうしよコマさん…!私、神社の子やけどなんもできひん…」

「事情はよくわからないズラ…けれど、さっきの黒いのが合危ないって言うのはわかるズラ。とにかく、今はおおもり神社を目指すズラよ!」

「な、なんでおおもり神社?」

「ああいう類は鳥居を潜れないズラよ!」

「だ、だめやでコマさん!あれはそんなん関係あらへん!」

「もんげー!?な、なんてやつズラ…!」


とにかく、今はただ走るしかないのだ。本音を言うと、ケータくん家に駆けこんで、彼に友達妖怪を呼び出して倒してほしいところなんだろうけど…

ケータくんを巻き込むわけにはいかん。
本当はコマさんにも私から離れて、どこか見つからない場所に隠れていてほしいんやけど…


「今透を一人にしちゃだめな気がするズラ。怖いけど、ちゃんと透を守ってみせるズラよ!」


とのこと。
ああ本当に、なんて心強い。


一人じゃない。それだけでいくらか救われた気がした。






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