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現在、私は鬼神を目の前に正座をしております。理由はいたって単純明快。
「透」
「はひ…」
「俺はお前をそんな死に急ぎに育てた覚えはない」
いや、私もあんたに料理や家事等々してもらってる以外に育てられた記憶はないわ。
……待って、これ完璧に育てられてるやん。何、オロチって私のオカンやったん…?
「ムゲン地獄がどんなに危ない場所か知ってるのか?」
「だ、だって…それならケータくんも一人にできんかってんもん…」
「………はぁ」
ふっかぁーい溜め息を吐くオロチからそっと目を逸らす。
オロチが私のことすっごい心配してくれてるんはようわかる。わかんねんけど…
「…あれ、オロチ?その腕どないしたん?」
「は?…ああ、掠り傷だ。気にするな」
「あかんで!!些細な傷でも、ばい菌入ったら大変やねんで!!私が手当てする!」
「大丈夫だ。そもそもお前、手当てできるのか?」
「ふっふーん。今日の授業で上手な包帯の巻き方教わってん!ちょっと待っといてー!」
たったかたー!と正座をとき救急箱を置いてある棚まで走る。よし、うまいことオロチの説教から抜けれたで!
まぁ、手当てするんはホンマやけど。
「あった…!」
救急箱を抱えてリビングに戻れば、オロチはソファーに座って蛇さんたちをよしよしとなでていた。
あ、私もなでなでしたい。
「へい!腕出してみ!」
「なんなんだこのとてつもない不安感」
「まぁまぁ!!じっとしといてーや!」
消毒液を脱脂綿にぶしゃああああ!!とぶっかけて(オロチがドン引きしたように見ていたなんて知らない)二の腕近くにある傷にそっと触れる。
今更ながらぷるぷると腕が震えてきた。必死に止めようとするけれど、一向に収まらなくて…
「ッ…」
「…透、無理をするな。これくらいなめときゃ治る」
「そ、そういうわけにはいかん!」
消毒をし終わり、くるくると包帯を巻いていく。オロチが私にやってくれたみたいにきれいには巻けなかったけど、包帯としてはかろうじで機能していると思う。
「うっし…!できた!」
見て見て!!そう言おうとして、やめた。
だって、私が巻いた包帯を見て、とても懐かしそうに目を細めていたから…
言おうにも、言えなかった。
「オロチ…?」
「、…どうした?」
「包帯、巻けたで…」
「…あぁ、そうだな。ありがとう」
またや。また、その顔。
最近オロチはよくそういう顔をする。そんな顔されたら、私、反応に困んねんけど…
「透」
「んー?」
「……いや、なんでもない」
そういうオロチが、いつか見た真っ白い大きな蛇とダブって見えた気がした。
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