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「透さーん!勝手に行っちゃダメっていtぎゃああああああああああああああ!!!!」
「ケータくん!?一体全体何が…
アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
「ウィスパーああああああああああ!!!!!透さんがなんか変なのに捕まってるんですけどおおおおおおお!!!」
「おおお落ち着くニャケータ!!あれは幻ニャきっとそうニャッ!!」
「……いや、お前らが落ちつけよ」
やって来たケータくんたちは、私のこの状態を見るなり気が狂ったように叫びだした。
そりゃあびっくりすると思うけどさ…そりゃないんやない?
当人である黒いのはなんかどろろんどろろん言いながらいまだに私を離そうとはしない。
…そろそろうんざりしてきたんやけど。
「ケータくん!!こういう時こそS級の友達妖怪の出番じゃないですか!!」
「そ、そうか!!待ってて透さん!!今助けるから!!」
妖怪メダルセットオン!!
そう言ってケータ君がなんやかんややってる姿を遥か上の方から眺める。この際なんでもええからさ、はよう助けて。
私お腹すいたわ。
「出てこい!オレの友達、オロチ!!」
「………は?」
なにやらケータくんからめっちゃ聞き覚えのある名前が発せられた気するんやけど…
そうこうしている間に妖怪ウォッチのサークルから喚び出された妖怪のシルエットが徐々に見えてくる。
青い双頭の蛇さんマフラーを身に着けた鬼よりも恐ろしい蛇神さん。待ってねぇ待って。
なんでなん?なぁケータくんなんでなんなんでよりにもよって…
「どうしたケータ、何かあt………」
「………はは…ご機嫌麗しゅう蛇神さま……」
よりにもよって……オロチなん…?
当のオロチは、エプロンにお玉片手にケータくんを見下ろしている。あの、ケータくんが盛大に戸惑ってるんやけど…
あんたのその格好に…
「透……」
「ひ、…」
「夕飯までには返って来いと言っただろおおおおおおおおお!!!!!!!!」
「ごめんなさああああああああああああああい!!!!!!」
「え、え…はッ!?お、オロチ!?なんでエプロン!?なんでお玉持ってんの!?」
「あのバカ透の晩ご飯作ってたに決まってるだろう!!まだ洗濯物が残ってると言うのに喚びだしやがって…!」
「すませんっしたああああ!!!」
華麗なスライディング土下座をかましたケータくんに、ハッと鼻を鳴らしたオロチは、今だ黒いのに捕まえられている私の方に向いた。
…あの、目が怖いです…オロチさま…
「どんどろが目を覚ましたか…透の力によって引き寄せられたか、あるいは…」
「オロチー!!なんでもええけど降ろしたって!!私もう、死ぬ…!他界の怖いぃいいいいい…!!!」
「どろー」
「お、お願いだよオロチ!!透さんを助けて!!
「………はぁ。3分でケリをつける。透、お前は目を瞑ってろ」
「へ!?」
「早く」
「お、おう…」
オロチの言われたとおりに両手で目を塞ぐ。すると、ありえないくらいのとても強い力を感じたと思ったら、黒いのの絶叫がダイレクトに耳に響いた。こ、鼓膜が…!!
ひぃいいい…!!と情けない声を出しながらただひたすらに目を塞いでいると、ふっと今まで掴まれていた感覚がなくなり、バンジージャンプをしたような気持ち悪い浮遊感が襲ってきた。
あ、死んだわ。
そう悟り、果てしない空間を落ちるのを覚悟した。
…が、少し落ちただけで浮遊感はすぐにおさまった。不思議に思って手を離そうとすると…
「まだ塞いでいろ。ちゃんと俺が支えているから落ちはしない」
大丈夫だから。
すぐ耳元でそうオロチの声が聞こえて、一気に安心感が胸に広がった。
どうやら私はオロチに抱えられている様子。てゆーか、私的にこうやって目を塞いでいるより全身全霊を込めてオロチにしがみついている方がとてつもなく安心できるんやけど。
てことで今、全力でオロチにしがみ付いております。蛇さんたちを胸に手繰り寄せて。
「お、おい透!!」
「怖いねんッ!!お願いやから私から蛇さんとらんといてッ!!この子らだけが私の心の支えやねんんんんんんんん!!!!!!!!!!」
「意味が分からん!!!ケータッ!!!」
「は、はひぃ!!!!」
「透は連れて帰るからな!!これ以上面倒を起こされでもしたら…ちょ、こら透!!」
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…ッ!!!!!」
「だから!!こいつらをそんなに強く抱きしめるんじゃないッ!!!」
「…あのさ、ウィスパー」
「言いたいことはわかりますよケータくん。突っ込みどころは山ほどありますが、とりあえず彼らを温かい目で見守りましょうよ」
「なんだかんだ言ってるけど、オロチは透が大切ニャン」
こんな風に言われてるなんて知りはしなかった。
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透ちゃんはオロチさんのマフラーの龍がお気に入り。
徐々に文脈が崩壊していくマジック。
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