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ムゲン地獄の階層を降りるにつれ、ケータくんがラスボス的な各階層にいる妖怪たちを倒していくんだけど…
なんか、いろいろとすごいわ…
何がすごいかと聞かれたら答えられないけれど。うん…
第7階層の…なんやっけ、げ、ゲソヒゲール?まぁそんな感じのけったいな名前の奴を倒したジバニャンは、一息ついた後に不満気にケータくんを見やった。
「ニャー…ケータ、喚びだすのは構わニャいけど、こんなしょっちゅう喚ばれちゃおちおちニャーKBのライブにも行けないニャ」
「ご、ごめんジバニャン…」
「透も透だニャ!なんでこんな危ないところに来たニャ!?」
「いや、なんか流れで…それにさすがに小学生を一人で行かすわけにもいかんやん?」
「………はぁ」
な、なんや呆れたようなため息吐くやん…
「…もういいニャ。それより、早くぬえを探して、天地饅頭ゲットして帰るニャ!オレっち、ニャーKBのライブDVDの途中ニャ!」
「そ、そうだよね!よーし、じゃあまずはあっちを探すぞ!」
「うぃっす!」
「がんばれー」
ウィスパーをジバニャンを引きつれ歩き出すケータくん。
今、てゆーかだいぶ前から思っててんけど、私ほんまにただついてきただけやない?ケータくんみたいに妖怪ウォッチで友達妖怪喚び出せるわけでもないし…
「…とりあえず、みんなが捜してる天地饅頭ってのだけでも見つけたろ」
畳の廊下をゆっくりと歩き回りながら目的のものを探す。
そもそも、その天地饅頭がどんなんかも知らんねんけど…
ミスった、ふっつーにそのこと忘れてたわ。
「きゅぅ」
「ん?」
屏風に背を預けて賑やかなケータくんたちを見つめていると、かわいらしい鳴き声と共にちょいちょい、と制服のスカートの裾を引かれた。
振り返ると、全体的にピンク色をした…い、犬?が私を見上げていた。
「どないしたん?」
「きゅきゅ、きゅー!」
…なんやあんた、めっちゃかわええやないの。
きゅるきゅる、とつぶらな瞳のそいつは、私を導くようにスカートを引っ張った。
…私をどっかに連れて行こうとしてる?
「そっちになんかあるん?」
「きゅ!」
「…わかった、一緒に行くわ。おーい、ケータくん!」
後ろを向いてケータくんを呼ぶものの、聞こえていなかったのか彼らからの返事は返ってこなかった。
…まぁ、それなりに早く戻ってこればいい話か。
そう結論付けた私は、かわいい妖怪に導かれるまま廊下を進んでいった。
「透さーん!ゲットしたよ天地まんじゅ…あれ、透さん?」
「大変ですよケータくん!透さんがいないでウィッス!!」
「えぇー!?な、なんで!?」
「…も、もしかして、一人で先に行かれたのでは…!」
「なんで誰も透を見てなかったニャン!!」
「そんなこと言ったってぇー!」
*****
ピンクの子に連れて行かれるがままついて行くと、今までの階層と明らかに違う造りの場所に出た。
和風チックな橋が連なるここは、7階層までよりはるかに大きい妖気がビシビシと肌に突き刺さる。
「うっわぁ…なんやのここ…」
「きゅきゅ」
「はよ行けってか」
「きゅん」
「……はぁ」
こつり、こつりと冷たい床に私だけの足音が響く。
うぅ…さっきからこの先からの妖気がめっちゃ痛いで…
腕をさすりながらゆっくりと進んでいく。
少し歩くと大きい広間みたいな場所に行き、んでもってなんかでっかい釜がでーん、と構えていたのだった。
なんてシュール。てゆーかあれはなんぞ。
「…なぁ、ほんまにこっちであってんの?なんか行き止まりやねんけど…」
問いかけてみるが、待てども返事は返ってこない。不思議に思って見回すと、いつのまにかこの場には私一人がぽつん、と立っていた。
「…え、あれ!?さっきの子は!?」
と、とんずらされた、だと…!?
置いてけぼりくらったとか、こんな知らんところで一人で怖いとか、そんなこと思う前にまず「え、嘘やろ?」ってなってんけどッ!!!
どーゆーこと!!
てゆーか、私をこんな未知数な釜のところに置いて行かんといてよおおおおおおお!!!!!
―ごと、
「ッ!」
今…なんか音した…?
ぎぎぎ…と錆びた機械人形のように恐る恐る首を後ろに向けた。
「…………」
「……どろ」
な ん か お っ た で !!!
「どんどろー!」
「ぎゃあああああああああああああああ!!!」
えええなんで!?なんでなん!?さっきまで釜の蓋しまってたやんな!?なんであいてんの!?でもってあの黒い物体なに!?
もはや女子とかけ離れたような悲鳴を上げながら元来た道を爆走中。
途中パッと振り返ってみたら…
「ぎゃッ!!」
つ か ま れ た
あっという間に床とさよならした私。黒い物体は私を目の高さまで持ってくると、ぱかり、とその大きな口を開けた。
………嘘やろッ!!?!??
「ちょッ!!待ってよなんで!?やめろやめろ!!おいしくなんかないって!!おなか下すんが落ちやからやめぇ!!はよおろsうわあああああああああああだからやめろってばああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
「どろろ?」
「よし、ええ子や!ええ子やな!!そのまま、そのままゆっくり降ろし!!そう!!ゆっくりやで!!」
必死の抵抗あってか、わかってくれたのか黒いのは床にそっと私を下ろしてくれた。
し、死ぬかと思った…!!
「どんろろ、どろ」
「ぜぇ…ぜぇ…な、なんやねんあんた…いきなり人食べようとして…!」
「どろろ?」
「……そ、そんな顔したって無駄やからな!そんな、そんな…」
「どろぉ…」
「…そんな…捨てられた子犬みたいな…」
「どんどろぉ…」
「う……」
な、なんやねん…なんでそんな目で私を見るん…?
心なしうるうると寂しそうに私を見つめてくる黒い物体に、胸いっぱいに罪悪感が広がる。
…ついさっき食われそうになったものの、こんな風に見つめられたら「うっ…」てなるわ…
「どろーん!」
「ぎゃッ!!ちょ、おまあああ!!」
そして何を血迷ったか、物体は再び私を掴みあげたのだった。
なぜか嬉しそうに。食べようとはせんだけまだましなんやろうけど、うん…
「た…助けて…オロチ…」
「どんどろろん!」
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ピンクのきゅんきゅん言うやつは言わずもがなキュン太郎です。ゲームではムゲン地獄にキュン太郎は出現しません!…おそらく。
とりあえずいったん区切ります
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