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冬休みまで残り片手で数えれるくらいになったころ、本格的に雪も降り始めて寒さに拍車がかかっていた。

テストも今日で終わったし、あとは冬休みを待つのみ。はよ来い!!透は待ちわびてんで!

そんな午後の帰り道。


「透さん!」

「んー?おお!ケータくんやん!」


こんなくっそ寒い中、お供のウィスパーを傍らに元気よく駆けてきたのは妖怪仲間(見える的な意味で)の天野ケータくんだった。
彼は私のもとまで走ってくると、真冬の太陽顔負けの眩しい笑顔を放ったのだった。ま、眩しい…!


「げ、元気やなケータくん…寒ないん?」

「うん、平気!」

「子供は風の子ですからね」


しみじみとウィスパーが言った。


「そういえば、どないしたん?なんか私に用事でもあった?」

「ないよ。ただ透さんが見えたから走ってきた!」


何この子。めっちゃかわええ。なんやあれか、わんこか。そうかそうなんか…
そーなんかぁ!とケータくんの頭をなでくり回す。私も弟ほしいわ…

しばらくそうしていると、ウィスパーがごっほん!とわざとらしく咳ばらいをした。必然的に見やる私たち。


「ケータくん。透さんとのお話もいいですけれど、本来の目的忘れてません?」

「あ、そうだった!」

「え、何?何なん?」


ぽん、と手を打ったケータくんたちに私はただ首をかしげる。
友達と遊ぶ約束でもしてたんやろか。

そんなことを思っていると、ウィスパーが若干言い辛そうに口を動かした。


「あのですね、透さん…もしこの後、差支えがないようでしたら少しムゲン地獄まで付き合ってくれませんかね…?」

「…なんぞ?」





*****


「正天寺の裏にこんなところがあるなんて知らなんだわ…」


現在、私たちは正天寺の付近にある脇道を抜けた先のトンネルを歩いてます。そもそも、なんでここのガードレールが壊れとるんかが謎やねん。

何があった。


「俺も夏休みに一回来たきりだよ。まぁ、来る機会なんてめったになかったけど…」

「せやのになんで来よう思たん?」

「いや、ちょっと…知り合いがムゲン地獄にあるお饅頭を欲しがってて…」

「…そのムゲン地獄って饅頭屋さんの名前なん?」

「いや違うから!!」


ずばんッと突っ込みを入れたケータくんにえー…と漏らす。いやだってさ、そうやと思わん?なんかありそうやない?

…え、そんなことないって?んなアホな。


「とにかく、もうすぐ出口だから俺からはぐれないでね。透さん」

「…おー」


なんやろ、私のが年上のはずやのにめっちゃ引率されてる感が否めへん…


「ついたよ!」

「、…わぁ…!」


トンネルを抜けると、そこは一面の草原だった。
緑豊かな草木に恵まれたそこは、川が流れ、鳥がさえずり、虫たちが戯れている。けれどうるさくもなく、いるだけで何とも不思議な感覚になる。

そんな場所にぽつん、と不自然に佇む小さな小屋。


「…あれは?」

「あの小屋がムゲン地獄への入り口だよ。…こっから先は、本っ当に俺から離れないでね?」

「お、おう…」


じゃあ、行こう。
そう言って先陣を切るケータくんの後に続く。
…なんやろう、変な感じ。

小屋の戸を潜り、階段を下りていく。通路を進むたびに、だんだんと妖気が濃くなっていくのがわかる。
…もはやここは、妖怪の巣窟ってことやろか…。


「ねぇウィスパー、ぬえがいるのって確か…」

「えーっと、えーっと…あ!第7階層ですね!気を付けてください、二人とも。透さんにいたっては、くれぐれも私たちから離れないでくださいね!」

「りょ、了解しました隊長!!」


ビシッと敬礼すると、ウィスパーは「よろしい!行きますよ二人とも!!」と言い残し、ぴゅーん、とあっという間に見えなくなってしまった。


「「………」」

「…言ったそばから自分で消えたで、あいつ」

「はは……ごめん」


あれが執事で大丈夫なのだろうか。






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