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「透、着いたぞ」

「…ん」


鬼さんがいた場所から無事に帰還した私たち(オロチ曰く、あれは鬼時間と言うらしい)。
数時間前に見た我が家がひどく懐かしい。あ、今うるってきた。
私を抱えたまま器用に玄関のカギを開けるオロチ。


「家に着いたなら、言うことあるだろ」

「…ただいま」

「ん、おかえり」


てくてくとリビングまで行き、そっとソファーに降ろされる。俯いたら俯いたらで、鬼さんに追いかけられてる時に転んでできた傷が目に入る。なんか変色してきて青っぽかったり紫だったり、タイツも破けてるから余計グロテスクに見える。


「透、その黒い履物を脱いで足を出せ」

「黒い履物…あぁ、タイツな」


ちょっと待って。
傷に触らないようにゆっくりと立ち上がる。…けれどどうしても痛くて、途中でソファーに逆戻りしてしまった。


「いっつ…!」

「…やっぱりいい、そのまま座ってろ」


そして何を思ったのか、オロチはあろうことかタイツを破れたところから思いっきり引き裂いた。
ビリリリリリッ!!!といっそ清々しい位にすごい音を立てたタイツ。


「ええええええ!!?ちょ、何してんのッ!!?」

「いいから黙ってろ」

「、だッ…」


ぶしゃー!!と豪快にかけられた消毒液にのたうち回るけど、オロチはそんな私を押さえつけなおも傷口に消毒液をたっぷりとしみこませた脱脂綿を押し当ててくる。お、鬼や…!!さっきの鬼さんより鬼畜な鬼がここにおったで…!!


「し、滲みる…!!オロチめっちゃ滲みる痛い!!」

「知らん」

「嘘やろ!?」


ぐおぉお…!!と必死に痛みをこらえていると、不意にオロチが割れ物を扱うような手つきで私の足をなでた。


「透」

「ぐ…なん、すか…」

「俺は言ったはずだ。寄り道はするなと」

「…はい」

「…なんで約束を破った」


じっと私を見る金色の目を見つめる。怒ってる。だってすごく眉間に皺酔ってるもん。


「…ごめ、でも私、オロチにお饅頭買って来ようとしただけやねん…いつもお世話になってるからって、せめて…」

「……はぁ」


オロチの溜め息にびくり、と肩が揺れた。
どうしよ、嫌われてもたんやろか。妖怪ってなんだかんだ義理堅いし、約束破ってもた私に愛想つかしたんとちゃう…?


「こんなの、俺が好きでやってるんだ。お前から礼をもらうためじゃない。

…でも、ありがとう」


ずっと大事に持ってくれてたんだろ?
思わずオロチの顔を見ると、さっきまでの怖い顔はどこにもなく、彼はふわりとかすかに笑っていた。


「あ…」

「ほら、透が帰って来るのが遅いから肉じゃがが冷めてしまったじゃないか。今から温め直すから、透は着替えておいで」

「…オロチのご飯は冷めててもおいしいよ」

「それはどうも」


楽しそうにエプロンをつけるオロチを、私はしばらくぼーっと眺めていた。





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いろいろおかしいよ!!




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