興味津々
「ヘリオー!!」
どんッと背中に衝撃が走った。もう誰だかわかりきっているこの行動に僕は隠さずに溜め息を吐く。
「ゴン、腕が悪化しても知りませんよ」
「へへ、だーいじょーぶ!!それよりさ、ヘリオも一緒に行くよね!」
どこへ。てゆーか今の疑問文じゃなくて確定文だった。何言ってるんだ、当たり前だろうみたいな顔してますけど僕何にも聞いてませんからね。後からやって来たクラピカさんとレオリオさんが苦笑いしながら口を開いた。
「今からキルアのところに行くんだ。飛行船のチケットも取ってある」
「ゴンがヘリオの分もって聞かなくてなぁ。悪ぃが勝手に予約したぞ」
「……僕の荷物」
いたずらっぽく僕の荷物を掲げて笑うレオリオさんに一瞬だが殺意がわいた。結局のところ僕は彼らに同行せざるを得ないってことですねよ。まったく…
「いーじゃん一緒に行こうよー!!ヘリオはキルアに会いたくないの!?あんなこと言っといて!?」
「………」
あんなこと、とはおそらく試験の時に僕がキルアくんに言ったことだろう。誰から聞いたのやらこのタイミングでそれを出してくるなんて…
ゴンのさり気ない黒い何かを垣間見た瞬間だった。
「行かないなんて言ってないでしょう。もう…」
レオリオさんから荷物を引ったくって進む。一向に動く気配のしない彼らを振り返って溜め息を一つ。
「行かないのですか?僕、場所わかりませんよ?」
「…うんッ!!」
つくづくこの世界の利器は便利だなと思った。絨毯ではない大きくて丸い物体、魔法道具でもない飛行船は文字通り飛んで行く船だ。そんな飛行船を乗り継いだ僕らは今、でんしゃ、というものに乗っている。地面を住めるように車輪で走る四角くて大きな箱。めまぐるしく変わる景色に僕は釘づけだ。
「わぁ…」
大きく開かれた窓から身を乗り出して、上半身に打ち付ける風が髪やら服の袖やらをバサバサと靡かせた。
「あ、危ないよヘリオ!落ちたらどうするの!?」
そんな僕を心配してか、ゴンは僕が落ちないようにと腰にしがみ付いている。さすがに落ちませんよ、そこまで単純じゃありませんし。そう言うとレオリオさんが「二次試験で前科があるだろうが」と呆れたように溜め息を吐いた。失敬な。あれはちょっと手を滑らせただけで…
「そのちょっとが起こったらどうするつもりだ?」
「……むぅ」
「珍しいのはわかるが、キルアに会う前に怪我でもしたら元も子もないだろう」
渋々と体を引っ込めて椅子に座る。けれど顔は出しっぱなしだ。吹き抜ける風が気持ちよくて目を閉じた。
「…でも、もし僕が手を滑らせても、皆さんなら助けてくれるでしょう?」
妙な確信を持っていた。短い付き合いだけれど、僕自身彼らを当の昔に信用していることくらい理解している。ただなんとなく認めたくなかっただけなのた。都合がいいと笑え。でもそれが僕なのだ。そのままの状態で言えば、後ろで3人が吹き出す気配がした。
「ヘリオの口からそんな言葉がきけるとは思ってもみなかった」
「それほど信頼してくれてるってことでしょ?」
「そういうこった。な?」
「……子ども扱いしないでください」
顔を車内に引っ込めると、とてもいい笑顔の3人が僕を迎えた。あまりにいい笑顔だから、その…とても気味が悪かった。
「着いたようだな」
しばらく電車に乗っていると、僕らの目的地であるデントラ地区に止まったようだ。いそいそと荷物をまとめて、出際に駅員さんという人に切符を渡して降りる。キョロキョロと周りを見渡して、やっぱり見たことのない街並みに気後れしそうになる。いつの間にか店先の女性に話を聞きに行っていた3人の後を追うが、僕が駆け寄った瞬間3人は振り返った。
「ヘリオ、お前どこにいたんだ。心配しただろう」
「いえ、ちょっと…珍しいものばかりだったので」
「そっか!えっとね、キルアんちに行くにはバスで行くみたいだよ。観光バスが出ているみたい」
「暗殺一家がそんな露骨にしてていいんですか」
「いいんじゃない?」
あぁ、そう…。僕の世界でもそんなことはなかったけれど、うん…何も言わないでおこう。たとえ侵入されたとしても対処できると思っているからこそのこれなのだろう。号泣観光バスとやらに乗り込んで山道をひた走る。先頭で女の人が説明してくれるのを聞きながら外を眺める。このバスというやつは電車よりゆったりと走っていた。それでも人間が歩くのよりかはだいぶ早いのだけれど。
「…キルアくんはこんな辺鄙なところで暮らしているんですね」
「10人家族なんだって」
そして5人兄弟なんだそうだ。家族構成まで情報が垂れ流れているのはいかがなものかと思うが…
5人兄弟、か…。僕は父親と母親との3人家族だったから、そういう大家族は少し憧れている。
「こちらが、ゾルディック家の正門となりまーす!」
停車したバスから降りれば、目の前に聳える巨大な門。ガイドの女性曰く、この門は別名”黄泉への扉”と言われて、入ったら最後、生きて帰れないことが由来なんだとか。
「ちなみにここからは私有地となりますので、見学することはできません!」
「おいおい、山はあんなところにあるんだぞ!?」
「はい!ここから先の樹海はもちろん、ククルーマウンテンも全てゾルディック家の敷地ということです!」
樹海…森じゃなくて樹海…しかも敷地って…まるでどこかの貴族、いや、国王じゃないですか。お金持ちの人間は誰も彼も家を大きくしたがりますが、この家の住人はそれの比ではありませんね。
一言で言うとお金持ちの考えることがわからない。あぁ、シン様は別ですよ。
ぽかん、と正門を見上げる僕たちの口は開いたままだ。
「ねぇガイドさん」
「はい?」
「中に入るにはどうすればいいの?」
「…ぼうや、私の説明聞いてました?」
彼女は笑っているようで笑っていなかった。青筋も浮かんでいる気も…いいや、僕は何も見ていない。美人が起こると怖いと言うのは万国共通のようだ。
「へ、そんなのハッタリだろう」
「誰も見たことのない暗殺一家。やつらの顔写真でさえ1億近い懸賞金がかかってるって話だ」
「マジかッ!!ちくしょう、キルアの写真撮っとけばよかったぁ…!!」
人でなしだ。
武器を持った2人組は警備室のドアを乱暴に開けると、中で本を読んでいた警備の男性の胸倉を掴みあげた。
「こ、困りますよ…!私が旦那様に叱られるんですから…!」
「心配すんな。どうせあんたの旦那様は俺たちに始末されるんだ」
下卑た笑いを浮かべる男たちは、警備の男性から鍵を奪い取ると彼を突き飛ばして脇の小さな門へ歩いて行った。
「大丈夫?」
「いてて…あぁ、私は大丈夫だよ」
またミケがエサ以外の肉を食べちゃうよ。
そうぽつりと溢した男性を見つめていると、突然門の向こうから鋭い断末魔を聞いた。恐らくさっきの2人組のものであろうそれは恐怖に引き攣ったもので、その場にいた警備の男性以外の全員を凍りつかせた。
「…なに?」
ギギギ…とゆっくりと門が開く。そしてその隙間から大きな毛むくじゃらの手が、さっきの2人の骨を放り出した。申し訳程度に引っかかっているボロボロの服に、皮膚はもちろん内臓からすべてなくなっていた白骨死体。それはガシャンッと音を立てて地面に落ちた。
同時に響き渡るガイドさんと乗客たちの悲鳴。彼らは瞬く間にバスに逃げこみ、未だ門の前で立ち尽くす僕らに向かってガイドさんが叫んだ。
「あなたたちー!何やってるの!早くバスに乗って!!」
「あ、行っていいですよー!オレたちここに残るんで!」
「はぁ!?」
ゴンがガイドさんに返事を返しているのを尻目に門を見上げる。さっきの手は一体なんだったのか。ミケって言われていたから猫かなにかだと思ったのだけれど、あそこまで大きな猫はいるのだろうか。少なくとも僕は見たことはない。ハーゲンティの迷宮でもそんなものはいなかったから。
「なるほどね、キルア坊ちゃんのお友達ですか。嬉しいねぇ、わたしゃ20年ここに勤めてるけど、あんたたちが初めてだよ。友人としてここに来てくれた人はねぇ」
どうぞ、と出されたお茶を両手で持つ。この渋い味は呑んだことないな…コーヒーとも紅茶違うし、何でしょうか。
「来てくれてありがたいが、君たちを庭内にいれることはできないんだよ。さっきも見ただろう?でっかい手。あれはミケと言ってね、ゾルディック家の番犬なんだよ」
聞きましたかみなさん。あれ犬だったそうですよ。僕完全にでっかい猫だと思っていました。違うところで驚愕している僕をよそに話は続く。
ミケは家族以外の命令は聞かないし、懐かないらしく、果てに10年以上もその命令を忠実に守り続けているらしい。侵入者は全員噛み殺すという命令を。
でもそれならばちょっとした疑問が生まれるのだ。ミケが家族以外の言うことを聞かないのであれば、なぜこの守夫さん、もといゼブロさんはなぜ無事なのだろうか。もし彼が中に入る必要がなければ、さっきの門の鍵は持つ必要はない。その疑問はクラピカさんが口に出していた。
「私は入るのに鍵は使いません。これは侵入者用の鍵なのです」
「侵入者用…?」
「ああいう連中は不思議な門で、十中八九正面から堂々とやって来る。それで扉を開けられないと、門を壊してでも正面から入りたがるんだ。迷惑な話だよ」
「それでわざわざ鍵月の門を設けた、ということですか」
「そういうこと」
侵入者たちは無抵抗なゼブロさんから鍵を奪い取り、ミケに喰い殺されると言う算段らしい。言われてみれば、来るたび来るたびに門を壊されちゃたまったものではない。
「わざわざ…?そうか!」
「お察しの通り、私は守夫ではなく、ミケの後片付けをする掃除夫です」
「それに、本当の門には鍵はかかっていない!」
「その通り」
だだだッと全員で走って門のところに行く。そしてレオリオさんがふんッと気合を入れたのち、両手で門を押した。けれど門はびくともせず、ただレオリオさんが門の前で暴れまわると言う奇妙な図が完成した。中々にシュールだ。
「押しても引いてもびくともしねぇ!!鍵かかってんじゃねえの!?」
「単純に力が足らんのですよ」
「思いっきりやっとるわい!!」
「…まぁ見ててくださいよ」
そう言うとゼブロさんは徐に上着を脱ぎ、門に両手をついた。ゼブロさん曰く、この門は試しの門と言われていて、この門を開けれないようじゃゾルディック家に入る資格はないとのこと。力を入れたゼブロさんはゆっくりと扉を押す。すると、あれほどびくともしなかった扉が鈍い音を立てて開いた。
「…ご覧のとおり、扉は自動的に閉まるから、開いたらすぐに中に入ることだね。ミケなら大丈夫。試しの門を開けた人間は攻撃するなと命令されているからね。ちなみに1の扉は2トンあります」
「…に、2トン!?」
…なんだか強烈に嫌な予感がしたのだけれど。
「…ちょっと待ってください。今、”1の扉は”と言いましたか…」
「ええ、言いましたよ。扉は全部で7つ。1つの扉を開けるごとに倍の重さになって行くんだよ」
「倍!?」
「ちなみに、キルア坊ちゃんがこの前帰って来た時は3の扉まで開きましたよ」
「てことは……12トン!!」
「16トンだよ」
「…………」
キルアくんが16トンの扉を開けたと言うことは…あの子は見た目にそぐわず筋肉はマスルールさん並みにムキムキなのでしょうか…うわ、ギャップ。シャルルカンさんがヒナホホさんレベルで強靭になった時以上に違和感が凄まじい。
人知れずギャップに震える僕であった。
「うーん、気に入らないなぁ。おじさん、鍵貸して。友達に会いに来ただけなのに、試されるなんてまっぴらだから、俺は侵入者でいいよ」
「ゴン!」
「貸してくれなくても同じだよ。塀をよじ登ってでも中に入るから」
「無茶を言うなゴン!さっきの見ただろ、お前よりも何倍もでかいんだぞ!」
「だって納得いかないよ!」
「うッ…」
「友達を試すだなんて変だよ!絶対その扉からは入らない」
「確かに君の言うことはわかりますよ?けどねぇ、強行突破は無理なんですよ…」
ああ言えばこう言う。まさに押し問答だ。ゴンが言いたいことはわかるけれど、それでミケに食われてしまったら無意味だ。3人が何と言おうと意志を曲げないゴンに最初に折れたのはゼブロさんだった。
「…それでも鍵は渡せません。坊ちゃんの友達をむざむざミケのエサにするつもりはありませんからね。ちょっと待っててください」
小屋に戻って行ったゼブロさんを入り口付近から見守る。どうやら電話をかけてくれたみたいで、相手に怒られてしまったのかしきりに頭を下げている。すっとそこから身を引いた僕はもう一度試しの門の前に立った。
「……高い、ですね」
まるで僕らとキルアくんとを隔てる大きな壁のようだ。確かにゴンの言うとおり、友達に会いに来ただけなのに試されるのはちゃんちゃらおかしい話だ。イルミさんが言っていた”住む世界が違う”と言う言葉もわからないではないけれど、それでも納得できないものもあるのだ。
…最低でも2トンの扉を開けなければいけないのですよね。もしここにマスルールさんやモルジアナがいれば1の扉と言わず、もしかすると4、5の扉あたりまで開くのではないのでしょうか。…いいや、よそう。願望を言ったって開けられないのが現実だ。
「なんでお前にそんなことがわかるんだッ!!!いいからキルアを出せッ!!!!」
凄まじい怒号が耳を劈いた。びっくりして振りかえると、珍しく青筋を浮かべたゴンがズンズンと歩いてきた。
「ゴン?どうしました?」
「………」
「(怒ってる)………塀は登らせませんよ」
「…ヘリオまでそんなこと言うの」
「当たり前です」
「どいて」
「どきません」
ゴンの額に青筋が増えた。これにはさすがに僕も怯んだけれど、この子を登らせるわけにはいかないのだ。僕を睨み付けるゴンだったけれど、徐にリュックの釣り竿に手を伸ばしたかと思うとその場で門の上にそれを振るった。
「やめなさいゴン!!」
「うるさい!!」
「おい、ゴン!よせって!」
「3人はここにいてよ。オレ1人で行くから」
「そう言う問題ではなんです。少しは落ち着いたらどうですか」
「オレは落ち着いてるよ!!」
「どこがですか!」
「3人とも、少しは冷静になれ!」
「俺は冷静だよ!こら、降りろゴン!」
門に足を掛け始めるゴンは僕らを無視して登り始める。そもそも腕1本で無茶だ。たとえ登れたとしても、ミケの制裁が待っているのだ。そんなことろにみすみす彼を単独で活かせれるわけがない。
「もう…ゴン!!」
「やれやれ、仕方ないですねぇ…待ってください、ゴンくん。鍵を貸しましょう」
「待ってくれおっちゃん!今俺たちがゴンを説得するからよ!」
「でも彼の意志は固いんでしょう?その代わり、私も侵入者の門から着いて行きます」
「え?」
「私が行けば、もしかしたらミケが私を覚えていて攻撃してこないかもしれなせ。まぁほぼ100%全員殺されるでしょうが…」
「…それはダメだよ。そこまで迷惑はかけられない」
ようやっと降りてきたゴンにひとまずは一安心。無茶な子だと常日頃から思っていたけれど、まさかこれほどまでとは思わなかった。僕たちは安堵の息を吐かずにはいられなかった。
ゼブロさんの言葉に少しは頭が冷えたらしいゴンは、塀に引っ掛けてあった釣り針を戻す。
「…わかったよおじさん、おじさんのこと全然考えてなかったね。ごめん…。ヘリオも、ひどいこと言ってごめんね」
「…別に、慣れてますから」
そう言って背を向けると、視界の端っこでクラピカさんが眉をしかめた気がした。結局、ゼブロさんが開け放った門から全員が入ったのだが、彼が呼んだミケを見て戦慄する。僕の何倍もの大きな犬、キツネや狼にも見えるそれはまさに”番犬”だった。一切の感情をなくしたミケの目は、どこまでも深い闇だ。つぶらな目と言えば聞こえはいいだろうが、ミケはそれをも超越している。…感情が見えないことは、こんなにも恐ろしいものなのか。
「ぐるる…」
「ッ…」
そしてあろうことか僕の目の前にその巨大な体躯を横たえた。目と鼻の先にミケの口があります。食べられるのでしょうか僕。ゼブロさんが後ろで何か言っている気がするけど、僕はそれどころではない。ミケの鼻が…鼻がッ…!!僕の匂いを嗅いでいる…!!牙が見える…!!なんだこれなんだこれなんだこれ…!!
「ぎゃぁあああああああヘリオがッ!!ヘリオが喰われるッ!!!」
「おやおや、これは…」
「……どうしたらいいですか」
ミケの鼻がずっと僕の腹にくっついているのですが。動こうにも、一歩でも動けば食われる気がしてならない。かといってこのままも嫌だ。八方ふさがり…?
「ヘリオちゃん、でしたっけ?」
「はい」
「ミケの鼻をなでてあげてください」
「「「えッ」」」
殺す気…なのか…?
「…なぜ?」
「多分食べられはしないでしょうから、大丈夫ですよ」
大丈夫とか言われても多分とつく限り信用できないんですけど。って言いたいのですが、どうやらそんな雰囲気ではないらしい。怖いんですが…
じっと僕を見つめるミケをちらちら見ながら恐る恐る手を伸ばす。誰かがごくり、と生唾を呑みこんだ。
手の平に広がった感覚はとてもふさふさだった。見た感じ剛毛っぽそうだけれど、その体毛は案外柔らかい。そして驚くべきは、ミケが大人しく僕になでられているのだ。びっくりしました?僕もです。
「…あの、これは…」
「こんなことってあるものなんですねぇ。ここで働きだしてずいぶん経ちますが、ゾルディックの人間以外で正面からミケに触れたのはあなたが初めてですよ」
「え」
「えぇええええええええええ!!!」
よくよく見てみると、ミケがごろごろと喉を鳴らしていなくも…ない…?いやいや、あんた犬でしょうが。無機質な目で僕に鼻を押し付けるこの図は何とも奇妙だけれど、こ、心を許してくれたの…かな…。わ、わからない。
「そういえば、ヘリオってよく海鶴や鳥たちが集まってきてたよね」
「鳥は僕の友達ですから…」
「きっとヘリオの動物たちに優しい心がミケに通じたんだよ!」
「…そうでしょうか」
なんだか釈然としない。そもそもクルールがアルテミュラの人間みたいに動物たちと心を通わせれるなんて話、聞いたことがないですし…。まぁ、僕自身動物は好きですが。未だすりすりと僕に顔を押し付けるミケに対して恐怖心なんてものは地の果てに飛んで行ってしまった。つまり慣れました。まだちょっぴり怖いですけど…
「ヘリオ、ゼブロさんが今日は泊めてくれるって!行こう!」
「わかりました」
「う゛ぅー…」
「わわ…」
「ダメですよミケ。ゴンは僕の友達なんですから」
すっと身を引いたミケに手を振りつつサッと離れてゴンの腕を掴み、すでに歩き出しているゼブロさんたちの後を追った。すごい、今猛烈に生きている感がする。まるでシンドリアの月末を乗り切ったみたいなそんな感じ。
「…ねぇねぇヘリオ」
「なんでしょうか」
「ミケ、ついてきてるよ?」
「え」
振りかえればのっそのっそと歩いてくるミケ。ちょお、なんでッ!!なんでついてくるんですか!!ゼブロさん!!
「うわ、お前ッ!!連れてくんなよ!!元いた場所に戻して来なさいッ!!」
「無茶言わないでくださいよ!!」
「やれやれ…おーい、ミケー!ついてきちゃダメだからねー!!」
結局ゼブロさんに案内された小屋までミケはついてきました。
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