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満点の空に君と僕
「星を見に行こう」
事の発端は、昼間私が放った一言だった。
今日は100年に一度の流星群がやってくる日なのだ。パオズ山は街と違って街灯やら建物の明かりがないから、少し小高い丘に登るととってもきれいに星が見える。私はそれが楽しみで仕方ないのだ。
「ほし?」
「うん!パオズ山は星がきれいに見えるからね。天体観測しにいかない?」
「い、いく!ねぇおかあさん、行ってもいい?」
「ダメだ。夜遅くに出かけるなんて不良のすることだべ!それにおめぇら、今日のぶんのドリルは終わってるだか?」
「あー…」
「ま、まだです…」
「ほれみろ。…とにかく、ダメなものはダメだかんな」
そう釘を打ってお母さんは台所に消えていった。…ふっふっふ、実はここまでの出来事って予想通りだったんだよね。お母さんのことだからきっと家から出してもらえないって思ってたけど、さすがにドリルはした方がいいよね。
しょんぼりと目に見えて落ち込む悟飯の頭をぽんぽんしながら部屋に戻る。
任せて悟飯、おねぇがちゃんと天体観測できるようにしてあげるからね!
「悟飯、まずはドリルを終わらそう!んでもって、早くお風呂に入って寝よう!」
「おねえちゃん、流星群みれないの…?」
「ふっふーん、おねぇに任せなさい!その代わり、しーっ、だからね?」
「うん!」
*****
深夜。お父さんもお母さんもすっかり寝静まった頃、私はぱっちりと目を開いた。ふっふっふ、この時を待っていたのだ!いやぁ、楽しみだねぇ。ベッドの脇に隠しておいたリュックを背負ってこっそりと悟飯の部屋に向かう。手筈は整ってますとも。
「悟飯、悟飯起きてる?」
「うん、おきてるよ」
ひょっこり、と布団から顔を出した悟飯に笑いかけた。可愛いやつめ。
「さて、作戦決行です悟飯隊員。隊長とのお約束は?」
「おはし!」
「よくできました。ではこれより作戦に移行する。後に続け隊員!」
「ラジャー!」
こそこそと悟飯の部屋の窓から外に出てゆっくり歩く。ちなみに“おはし”とは『お』さない、『は』しらない、『し』ゃべらないである。どこに避難するのかって?どこにもしないよ。
数十分くらい歩いた頃、目的の丘が見えてきて私たちは思わず走り出した。あ、お約束破っちゃった。ま、いっか。
ただいま夜中の12時であります。ニュースによれば流星群はあと1時間後か…
私はまだしも、悟飯は起きてられるかなぁ。昼間たっぷりお昼寝したんだけど。
「悟飯、大丈夫?」
「う…少しねむい…」
「もう少しだからね、頑張って」
「むぅ…」
ごしごしと眠そうに目を擦る悟飯は今にも船を漕ぎ出しそうだ。むー、しょうがないなぁ。
「悟飯。膝枕してあげるからおいで。時間が近くになったら起こしてあげるよ」
「ぅん…」
こてん、と横になった悟飯はぎゅっと私の腹にしがみつき、寝息を立てた。あーぁ、こりゃ爆睡コースかもしれないなぁ。
虫の鳴き声と悟飯の寝息だけが聞こえる静かな夜。時々聞こえる寝言に笑いつつ空に浮かぶ月を見た。今日はちょうどきれいな半月だ。後何日かもすればまん丸な弧を描く満月になるだろう。
別に満月に何かしらの思い入れはないけど、それでも私はあまり満月が好きではない。理由?なんとなくだよ。
「あ、流れ星」
ひゅん、と1つの星が空を駆けた。それを皮切りにたくさんの星が落ちてくる。暗かった丘は降り注ぐ流星群で仄かに明るくなり、木々を照らした。
慌てて私は悟飯を揺り起こす。
「悟飯、悟飯起きて!流星群!」
「んむ…りゅーせーぐん…」
「そう!始まったんだよ」
「ッ!」
がばり、と飛び起きた悟飯はキョロキョロと視線をさ迷わせたあと、ついっと空を見上げた。途端にキラキラと目を輝かせるそれに流星群が反射した。
「わぁ…きれいだなぁ…」
「…うん、そうだね」
30分ほど続いた流星群を私たちはただただ見つめていたのだった。
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これで赤子、幼少期編は終了となります!
これからアニメ、原作沿いで行きたいと思うので宜しくお願いします!
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