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胸いっぱいの花束を





「シュエちゃん、今日は家のお手伝いはいいから、悟飯を連れて街におつかいに行ってきてほしいだ」


唐突なお母さんの言葉に一瞬疑問符が頭を飛び散った。


「おつかい?」

「んだ。本当は二人だけじゃ心配だども、今日はおらも悟空さも手が離せねぇべ。」

「わかった、何買ってくればいいの?」

「このメモのものだな。悪ぃだな、おらもついていってやりたかったんだども…」

「大丈夫だよ、お母さん。悟飯の面倒もちゃんとみるし、おつかいもばっちりすませてくるからね」

「頼んだだよ」

「うん、いってきます」


出際にお父さんとすれ違って声をかけたら、どこかソワソワと落ち着きなく視線をさ迷わせていた。どうしたの、と聞く前にお母さんに「悟空さ!」と怒られていたけど。
悟飯を連れて少し離れたところまで歩く。この辺なら大丈夫かな?


「買い物の量はそんなに多くないみたい。ねぇ悟飯、街のはずれまで飛んでいこうよ。私たちの足じゃ日が暮れちゃいそうだし」

「うん!えへへ、やったぁ」


しっかりと悟飯を背負って舞空術で飛ぶ。途中なんか鳥の大群と鉢合わせたけど、あれはビビったよ本当。この広大な空のもとよける術はいくらでもあったはずなのに突撃してきたんだよ?意味わかんない。

何気に広いパオズ山を越え、ようやっと街が見えてきた頃背中の悟飯が感嘆の声を上げた。


「わぁ、おっきいねー!」

「私も初めて街に来たや」


街並みは前世と似ているようで似ていない。ところどころなんか不思議な建物が建っているんだけど…何あれオブジェ?

街の少しはずれた所に着地し、しっかりと悟飯の手を握る。


「迷子防止だからね。はぐれちゃダメだよ?」

「わかった!」





*****


2、3時間もあれば十分買い揃えることができたわけで、お母さんに内緒でアイス屋さんでアイスを買って、珍しく悟飯にせがまれたからちょっとだけ公園で遊んで、現在帰宅なうです。舞空術超便利。

なんか今日いつもより充実した感があるんだけど。めっちゃ楽しかったよ。


「たのしかったね、おねーちゃん!」

「うん!あ、アイスのことはみんなに内緒だよ?」

「だいじょーぶ!ぼくたちだけのひみつ、でしょ?」

「よくできました!花丸あげちゃう」


キャッキャとはしゃいでいるうちに家が見えてきて、少し離れたところで降り立ちあからさまに歩いて帰ってきました感を出しながら歩く。
…よし、今日も誰にも見つからなかった。


「ただい…」


ーパーンッ!


一歩足を踏み入れた瞬間ものっそい破裂音が耳を劈いた。
何、何!?何なの敵襲!??!


「「「シュエ、誕生日おめでとおー!!」」」


ぽかん、といった表現が正しいのだろうか。まさしくそんな感じの間抜けヅラで、クラッカーを握る笑顔の両親と牛魔王のおいちゃんを見つめた。

…え、何ごと?


「さてはおめぇ、何のことかわかってねぇな?今日はシュエの誕生日だぞ!」

「たん、じょーび…」


ほれ、とお父さんに渡された小さい立て掛けカレンダーを見ると、なるほど本当だ。すっかりさっばりしっかり忘れてたよ。


「主役が来たことだし、ささ、席についたついた!」

「悟飯、よくシュエを引き止めてくれただな!えらいえらい」

「えへ」

「なん、だと」


悟飯の頭をなでるお母さんを呆然と見つめる。珍しく悟飯が我が儘言ってくれたから嬉しかったのに、まさかそれが策略だったなんて…
あの純粋なくりくりおめめに騙されたのか、私…


「悟飯…まじか…」

「なぁにボケっと突っ立ってんだ?早く来いよシュエー!」

「…ま、いっか。はーい今行くよ」


とにもかくにも、自分の誕生日を祝われて嬉しくないわけがないので、ちゃっかり自分の事分の食事を確保したのだった。





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余談ですがシュエちゃんは悟空とチチからは髪留め、悟飯からは押し花のしおり、牛魔王さんからは服をもらったらしいです。
それらの絵はいずれアップしたいなぁなんて。






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