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悲しき殺戮者



※流血、グロ描写、死ネタ警報



右腕が吹き飛んだ。スッパリと斬れた二の腕あたりからドバドバと血が滝のように流れ出ているのを感覚的に感じながら、シュエはあまりの激痛に声にならない悲鳴を上げた。


「ッ…う……」

「はぁ…はぁ…はは、あまりにも鬱陶しいから、片腕を切り落とさせてもらったぞ」

「がッ」


背後から現れたセルはシュエを蹴り飛ばす。何の抵抗もなく攻撃を食らったシュエは、血痕を残しながらリングの端っこまで転がる。今の蹴りで内臓が少し傷付いたのか、微量の血を吐きながら横目でセルを睨み付けたシュエだが、渾身の散画龍・八岐大蛇で吹き飛ばしたはずのセルの半身は、ピッコロの血によってきれいに元通りとなっていた。それに愕然と目を見開き、もう一度咳き込んだ。


「もうやめろシュエッ!!片腕で敵うわけがないんだ!!」

「もういい!!もういいから…!!頼むから降参してくれ!!」


悟空たちから制止の声が飛んでくるも、それらを全部聞こえないふりをして再び地を蹴る。片腕を落とされてもなおシュエのスピードは緩むことはなく、むしろ不自由になった一部を補うかのように脚力があがる。


右腕がなくとも左腕がある。両足がある。大丈夫、私はまだまだ戦える。
大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫へっちゃら平気なんてことないこのくらい大丈夫痛くない私がやらないと大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫。


「私が…私がやらないと…!私が終わらせるんだッ!!!」

「ちッ…ちょこまかと目障りだ!」

「うるさいッ!!!」


セルの横っ面を蹴り飛ばしたシュエはそのままの勢いを殺さずにさらに追撃をする。が、セルも負けじとシュエに攻撃を繰り返す。止血もせず、今までずっと垂れ流していた血液のせいで視界がぼやけて見えるシュエは避けることはできずに、撃ち出されたエネルギー波をもろに食らった。
全身ボロボロで、血まみれになりながらもなお立ち上がり続けるシュエが煩わしく感じ始めたセルは、渾身を込めて蹴り飛ばした。場外に飛んで行くシュエに誰もがそのまま落ちてくれと願った。が、それでもシュエは朦朧とする意識の中舞空術で空中に留まったのだった。


「やめてよお姉ちゃんっ!!もうやめてッ!!」

「…あは…それは、無理」

「なんで…!!」

「なんでも」


悟飯はわからなかった。なぜシュエは死にそうになりながらもセルに向かい続けるのか。なぜ、どうして、もういいじゃないか、これ以上戦うとシュエは死ぬ。止めなくちゃ。もうお姉ちゃんを、大好きで大切なあの人が傷付くのは嫌だ。でも、どういうわけか悟飯の体は金縛りにあったかのように動かなかった。
セルに向かっていくシュエの背中がどこか遠くの方にある錯覚を起こす。このまま一生手が届かない場所に行ってしまうのではと思わず手を伸ばした瞬間。


「もういい、お前には失望したぞ。孫悟空の娘よ」


そう呟いたセルが一瞬でシュエの背後にまわり、シュエが振り返るよりも早くその細い首を、横に薙ぎ払った腕で刎ねた。


「え…?」


首があった場所からは血が噴水のように吹き出していて、近くにいたセルの全身を赤く染め上げた。どさり、と崩れ落ちる体、リングに首が落ちる。その瞬間が酷くゆっくりに見えた。誰もがその光景に絶句する。

あれ、おかしいな。うまく息が吸えない。お姉ちゃんってば何やってるの?またいつものいたずらかな。お姉ちゃんは時々突拍子でもないことをやるから。ねぇお姉ちゃんもういいよ。いつも言ってたじゃないか。そう言うのおもしろくないって。笑えないって。ねぇ、約束したじゃないか。僕が帰る場所なんでしょ?ならいつもみたいに笑顔でただいまって言ってよ。

本当…


「うそつき……」


ぼたぼたと地面に涙が落ちる。全身から力の抜けた悟飯は地面にへたり込み、うっすらと開いたシュエの光のない瞳を見つめた。ざわめく周りの音や声がどんどん遠のく。

あぁ、くびが…

お姉ちゃんの、くび、が…


「ふん、バカな小娘だ。片腕が切り落とされた時点で降参しておけば死ぬことはなかったかもしれないのに」


ぐしゃり、セルに蹴り飛ばされたシュエの体と首が悟飯の目の前に落ちる。投げ出された四肢を呆然と見つめながらシュエの首をそっと抱きかかえた悟飯は、静かに殺気を放った。


「………さ、ない…」

「ご、悟飯…?」

「さぁ、次はどいつだ。それとも、そいつのように首を刎ねられるのが恐ろしくて怖気づいたか」


なぜ殺した。よくもお姉ちゃんを殺したな。優しくて強くて僕の大切で大好きな人をよくも。


「ゆる、さない…ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないッ!!!!」


ドンッと大きく膨れ上がる悟飯の気にその場にいた全員が恐れ戦いた。溢れ出る力が気流となって激しく土埃を巻き上げる。大切な姉の首を抱きしめ、ゆらりと立ち上がった悟飯は燃え盛る殺意の炎を灯したその目をセルに向けた。セルは思わず一歩後ずさる。


「お前は…お前は絶対にゆるさない…ッ!!絶対に僕が……」


シュエの首を体の傍にそっと置いた悟飯は、地面をぐしゃぐしゃと踏み抜きながら歩いていく。逆立った金の髪が渦巻く気で揺れる。そしてリングに片足をかけ、マントを脱ぎ捨てた。


「殺すッ!!!!」





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管理人はあくまでハピエン主義者です。





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