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白々しく、なんちゃって
セルゲーム当日。ピッコロさんから胴着を新調してもらった。今まで通りの膝丈スカートに右脚にスリットが入ったやつ。あ、マントはなしね。だってあれひらひらしてて嫌だもん。それと今回は白いアームウォーマーが追加されていた。
「…ピッコロさん」
「なんだ」
「ピッコロさんと悟飯は帯の色青なのに、なんで私だけ赤なのさ。なんかハブられてる感が否めないんだけど」
「別にハブっているわけじゃない。そもそもお前は女としての頓着がなさすぎるんだ。そのくらい我慢しろ」
「何それ理不尽」
我慢って…てゆーかピッコロさんは私に女子力を求めているのか。ふ…無理な相談だね。セルゲームに参加する時点ですでに女子じゃないやい。…なんか、自分で言ってて切なくなったんだけど。
まぁピッコロさんの言いたいことは大体理解しているつもり。いつも男に混じって修行だのなんだのする私を気遣って、せめて帯の色だけでも女らしくって思ったんだと思う。こういうさり気ないところがお母さんだよね。
そしてデンデくんから衝撃的な事実を聞いた。ドラゴンボールが復活したはいいものの、前みたいに1つの願いでたくさんの人を生き返らせてもらう代わりに、1度死んだ人間は二度と生き返らせることができなくなると言うものだった。おかげでまだセルゲームが始まってもいないのに場の雰囲気はお通夜だ。
「気にすんなよデンデ。オラたちが死ななきゃいいんだろ?」
「死ななきゃって…お父さん無茶苦茶だなぁ」
「そうけ?」
「うん」
「相手はあのセルだぞ?」
「いいからいいから、早く行こうぜ!12時過ぎちまうぞ?」
さっさと歩いて行くお父さんの背中を納得してなさげに見つめる私たち一同。だけどずっとこうしているわけにもいかず、仕方なしに舞空術で空を舞うのだった。
セルに指定された場所は中の都の北西28KSの5地点。神殿からは少し距離のあるこの場所は、今のスピードで飛んで行くと大体約20分程度といったことろだろう。途中でヤムチャさんや天津飯さんと合流しながら会場に急ぐ。ベジータさんは一足先に行ってるみたい。全く、せっかちさんだなぁ。せっかくなんだし一緒に行ったっていいのに。
「シュエ、大丈夫か?」
不意に天津飯さんが声を掛けてきた。大丈夫かって…え?私は今日も平熱を保ってますけど。
「いやそうじゃなくてだな…。お前、なにか思いつめていないか?以前より少し表情が変わった気がする…」
「えー?またまた、そんなこと言ってぇ。へっちゃらですとも。元気元気!」
「…なら、いいんだが…」
うーん、なんか納得していない顔だなぁ。クリリンさんもどうしてそんな顔で私を見るんだろうか。みんなが心配するようなことは何もないのに。ほら笑って笑って!辛気臭い顔してると、勝てるものも勝てないよ!そう言う意味を込めてにッと口角を上げると目を逸らされた。え、ひどい。
「見えた、あそこだ!」
「よし、行くぞ」
ついに視界に入ったセルゲームのリング。それ目がけて急降下した私たちは、すでに来ていたベジータさんの後ろに降り立つ。ちょ、ベジータさん鬱陶しそうな目で睨まないでよ。集団行動は大事だよ。
そう言えばリングの上にカメラマンと実況アナウンサーと…えと、あれはミスター・サタンだっけか。がいた。神殿のテレビで見たけど、あのおっちゃんただの目立ちたがり屋だよね。いろんなパフォーマンスとかやってたけど、くだらなすぎてクリリンさんと笑ったわ。傑作でしょーよ。
「お揃いでようこそ」
口元を歪めたセルが腕組みを解きながら言った。うわ、セルの完全体始めて見た。てか身長でか…。
「…よし、さっそくオラから戦わせてもらおうかな」
「え、いきなり悟空さんから戦うんですか?」
「おう。いいだろ、ベジータ」
「好きにしろ。どのみちフィニッシュを決めるのは俺だ」
うーん、予想はしてたけどやっぱりお父さんが1番手を名乗り出たか…早いとこ変わってもらおう。
そう思いながら手を上げると、何か知らないけどサタンのおっちゃんが怒り出した。なんなのかねもう。
「勝手に順番を決めるんじゃないッ!!」
「あのー…もしかして君たち、このセルゲームに参加するつもりなの?」
「え?そうだけど」
「わ、悪ふざけはいい加減にしたまえ!!これはお遊びじゃないんだ!!こんな幼気なお嬢さんまでつれて…!!」
そう言うサタンの視線は………あれ、私?私か?自分を指差してトランクスさんを振り返ると、うん、と深く頷いた。え、私って幼気なお嬢さんだったんだ。初耳だわ。
「君たちは、何もわかっちゃいないんだ!!」
「わかってねぇのはそっちだろ…」
クリリンさんの追撃にたじろいだサタンが面白くて思わず吹き出した。悟飯に脇腹をつつかれた。だって面白いじゃん。ムカつくけど。
そして何やらアナウンサーがミスター・サタンは世界で一番強いだのなんだのぐちぐちと言っているが、正直どうでもいい話である。サタンが地面に埋まっている岩を引っこ抜いて頭にぶつけて砕いてドヤ顔しているなんて私にとっちゃどうでもいいのだ。興味ないし。てゆーか何がすごいのかさっぱりわからん。お父さん一同は呆れかえっているのか顔がすごいことになってるもん。あのピッコロさんでさえ口が半開きなんだよ。
「お嬢ちゃん、そんなところにいては危ない。さぁ、このミスター・サタンの傍にいればもう安心だ」
「は…え、ち、ちょっと」
なんか腕掴まれて引っ張られてるんだけど。アナウンサーの人たちもこれでもう安心みたいな顔して…え、なに、なんなの。新手のいじめ?お父さん見てないで助け……あぁ、なんか放心してる。ダメだありゃ。振りほどこうとするが、意外にもサタンの力は強くて振りほどけない。私腕力ないからなぁ。仕方ない、あんまりこの手は使いたくなかったんだけどいいか。
「…や、やぁあああああああ!!!」
「「「「「!!?」」」」」
出来るだけ女の子がするようなかわいい悲鳴を上げて(お父さんたちもセルもびっくりして固まってた)、一生懸命を装って足を踏ん張る。そして極め付きにはうるうるとさせた涙目で上目遣いをすれば完璧である。
「い、痛いよぉ…おじさん、私をどこに連れて行くの…?」
「え!?いやあのッ…わしはそんなつもりじゃ…」
「お父さんのところに帰してぇ…!」
「あ、君ぃッ!!」
一瞬手が緩んだのを見逃さずに振り払うと、一目散にサタンたちから離れてダッシュし、お父さんに抱き着いた。
「うえーん、お父さん怖かったブフォッ」
「お前なぁ…、演技するなら最後までやれよな」
「だ、だっておもしろすぎて…!だ、ダメ無理腹筋死ぬ」
「おいお前ら!よくもうちのかわいい妹分を泣かせてくれたな!」
「よしよし、怖かったなシュエー。父ちゃんがついてるから大丈夫だぞ」
「ファーッ!!!」
意外にも私にノッてくれたお父さんとヤムチャさんに今度こそ私は膝から崩れ落ちた。こ、この人たち私を殺しにかかってきてるんじゃないの?も…おなか痛い…笑いすぎて。向こうでぽかん、と私たちのやり取りを見ていたサタンたちは、ようやく私の演技に騙されたのがわかったのかぐわッと眉を吊り上げた。おー、こわ。
「こ、この…ッ!せっかくこのミスター・サタンが守ってやろうって言うのになんだその態度はッ!!」
「世界チャンピオンに守ってもらうだなんて、むしろ光栄に思うべきなんだぞ!わかってるのかね君!!」
「悟飯、いい天気だね」
「お姉ちゃんってば、もう…」
未だ何か言ってるサタンたちを尻目に私は悟飯にくっついたのだった。
「………始めてもいいか」
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