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セルゲームまで残り僅か。それまで私と悟飯、クリリンさんは神様の神殿で過ごすことになった。寝室などはポポさんが準備してくれたから、お礼にパンケーキを作ったら、嬉しそうに受け取ってくれた。こういうところ、ポポさんってかわいいなって思う瞬間だなぁ。
「えっと、ここがこうなって…」
「うーん…」
「なんだなんだぁ?お前ら揃いも揃ってドリルなんてやってんのか?」
「お母さんからの言いつけですから。暇さえあればどこでもドリルをやっておくようにって」
「僕も、優秀な龍族になるためにはもっと勉強しないと!」
なんて偉い子たちなんだろうか。いつでもどこでもドリルを持ち歩くだなんて真面目すぎるよ。てゆーかどこから出したのそれ。おねぇめっちゃ気になるな。
「…で?悟飯やデンデが勉強する中、お姉ちゃんのシュエは手ぶらかー?」
「ギクッ…な、何のことやら私にはさっぱり…」
「シュエ、ドリルはどうした」
「……も、持ってきてるわけないじゃん!!なんでこんな時にまで勉強せにゃならんのだぁ!!」
「ならんのだぁってお前なぁ…」
じとり、とクリリンさんが私を見た。だ、だってだって、昨日家にあったドリル全部やったもん。できるドリルないもん。丸つけも全部終わったもん。全部答えあってたもん。なのでしばらくは勉強しなくてもいいのだ。私の時代来たこれ。そう言うとクリリンさんは深く息を吐いた。所謂溜め息。
「お前って地味に頭いいもんな。ナメック星に行く時の宇宙船でも、本棚いくつ分だよって言うドリル3日で終わらせてたっけ…」
「あぁ、僕を見捨てた時か…」
「ちょ、人聞きの悪いこと言わないでよ悟飯!!あれはあんたがイメトレに夢中になってただけでしょ!デンデくんが勘違いしたらどーすんのさ!」
「だ、大丈夫ですよシュエさん!ちゃんと僕わかってますから!」
「めっちゃいい子やこの子…」
てゆーかね、なんか最近みんなさ、私の扱い雑になってきてない?特にピッコロさんとかピッコロさんとかピッコロさんとか。私ってば意外と繊細なのよ?ブロークンハートしたらどーすんのさ。なーんてね。こんなこと言ってる当たりまだまだ平気ですけど。ふと神殿に立てかけてある時計に視線を移すと、夕方の5時を指していた。おっと、そろそろ行かないと。
「んじゃま、私はちょっくら行ってくるね」
そう言って立ち上がると、悟飯が弾かれるように私の腕を掴んだ。び、びっくりした…なんなのかね君は。
「どこ行くの?」
「そんなこと聞くなんて、悟飯ったら野暮だよ」
「…僕に、言えないこと?」
「別にやましいことしてるわけじゃないよ。心配しなくてもちゃーんと帰って来るさ。だからここで待っててよ」
ぐっと眉間に皺を寄せた悟飯。けれど徐々に眉をハの字の垂れさせると、ゆっくりと私の腕から手を離した。
「…お姉ちゃんの待ってては信じられないよ」
「今から死ににいくんじゃないのに大袈裟だなぁ。ちょっとブルマさんとこに行くだけだよ。すぐ帰って来るって」
あばよッ!
ぽすぽすと悟飯の頭をなでてから神殿を飛び去った私。まぁブルマさんとこに行くって言うのは間違いじゃないよ。ただ用があるのは彼女の父親、ブリーフ博士なだけで。なぜ博士に会いに行くのかというと、私の家庭教師というか、先生が博士だからだ。いつもは忙しい博士に無理言って、比較的時間のある夕方の5時から約2時間ほど勉強を見てもらっている。だってそこら辺の鼻だけが高いやつらの世話になんかなりたくないし、カプセルコーポの社長というだけあって彼は天才なのだ。そしてブルマさんも然り。博士が手が離せないときはブルマさんが代わりに勉強を見てくれてる。最初はお母さんが渋っていたけど、ブルマさんたちに勉強を教えてもらうようになってからというものの塾での成績は鰻登りで、週1でカプセルコーポに通うことを許してくれたのだ。
「こんにちは、ママさん」
「あらシュエちゃん、いらっしゃい。おいしいケーキあるけどいかが?」
「あは、ごめんなさいママさん。今日は遠慮しときます。博士はいますか?」
「パパ?ごめんなさいね、今日はどうしても手が離せないみたいで…シュエちゃんに謝っといてくれって言ってたわ」
「そうですか…」
「ちなみに、ブルマちゃんならトランクスちゃんのお部屋にいるわよ」
「!あ、ありがとう!」
「あとでお茶とケーキ持って行くわねぇー!」
ジョウロ片手に手を振るママさんに手を振り返しながらトランクスくんの部屋に走る。確か2階の奥だった気が…。うーん、ブルマさん家広大だからなぁ、何度来ても迷うよ。てゆーか私が今どこを歩いてんのかわからなくなったんだけど。
ぼへぇっと歩いていると、廊下の角からひょっこりとブルマさんが顔を出した。
「あ、いたいた。もぉー、遅いじゃないの。待ってたんだから」
「ちょっと迷っちゃって…てへぺろ」
「だろうと思ったから、探しに来てあげたわよ。ほら、こっちよ」
「はーい」
てこてことブルマさんについて行くと案の定トランクスくんの部屋に案内され、ベビーベッドですやすや眠るかわいいトランクスくんがいた。天使の寝顔ってまさにこれだよね。
「トランクスの寝てる横で悪いんだけど、早速今日の課題をやるわよ」
でん、と折り畳み式の小さなテーブルに積み重ね上げられた紙の束。電話帳3冊分を越えるそれに思わず1歩引いた。うわぁ…これで殴られたら多分失神する。
「えっとねぇ、この前は数学の大学生の問題を教えたって父さんが言ってたから、今日はその復習ね。とりあえずこれを一通り自力で解くこと。その後に丸付けして、間違えてたところやわからなかったところを重点的に教えるわね」
「了解です」
「1時間で終わらせてね」
「え」
なんか今とんでもないことが聞こえた気がするんだけど気のせいかな。この分厚い紙束を1時間…え、嘘やん。
だがしかしブルマさんの目は本気だった。にこり、と笑う彼女が恐ろしくて慌てて問題に取り組む私であった。何これ情けない。まぁ、ブルマさんの無茶振りは今に始まったことじゃないし。
ちょくちょくわからないところを聞きつつも、これ以上にないくらいのスピードで問題を解いて行く。ここに通い始めてからというものの、計算するスピードが格段に上がった気がするのはきっと気のせいではない。
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「…うん、さすがシュエちゃん。ほぼ間違いはナシね。父さんから聞いてた指数と対数の問題もできてるわよ」
「で、でも数列の問題が意味不明なんですけど」
「こんなの根性よ」
「んな無茶な」
丁寧に解説をしてくれるブルマさん。実を言うと私はこういった証明みたいな問題が一番嫌いなのだ。なんなの、何を証明すんの。存在を求めるって何。もうすでに紙上で存在してるじゃないのさ。図形とか方程式とかそう言うのなら得意なんだけどね。だって図形楽しいじゃん。
「とまぁこんな感じかな。あとはひたすら解くしかないわね」
「うげ…」
「そんな顔しないの。ほら、最後にブルマ様特製の復習プリントして今日はおしまいよ」
「はぁーい…」
何はともあれ、私が頑張るに越したことはないのだ。でも、できれば数学はもうやりたくはないかな。古文やろうよブルマさん。楽しいよ。そう言うと彼女は「昔を振り返って何が楽しいのよ」と顔を顰めた。とりあえず謝った私ってばきっと正しい反応をしたに違いない。
一通りを終えた私たちが起きたトランクスくんとのんびりしていると、ママさんが西の都で有名なケーキ屋さんのケーキと紅茶を持ってきてくれて、それがまたとんでもなくおいしかった。お土産までもらっちゃったし、今度来たときはお礼に何か持ってこようっと。
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