心の叫び
ある日突然お父さんから神様の神殿に来るように言われ、言われるままにお父さんの瞬間移動によって神殿に行くと、思いもよらない人物と再会を果たしたのだった。
「きゃーッデンデくん!!」
「シュエさん!!」
久しぶりー!!
ダッシュした勢いのままデンデくんをむんずッと抱きしめた。苦しそうにしつつも嬉しそうに笑うデンデくんマジぷりちー。寂しかったよこの数年。
「元気だった?新しいナメック星での暮らしはどう?あ、そう言えばちょっと背伸びたんじゃない?とにもかくにも会えてうれしいよ!」
「く、苦しいですシュエさ…あはは」
「………」
「(うわ…悟飯のやつ顔がすげーことに…)あー…シュエ?そろそろ離してやれよ。苦しそうだぞ?」
「あ、ご、ごめんねデンデくん」
「い、いえ。大丈夫です」
そうやってはにかむデンデくんマジジャスティス。地面に降ろして頭をなでこしながら振り返ると、腕に悟飯が抱き着いてきた。
「およ。どうしたんさ」
「………………別に」
「…さいで」
な、なんか機嫌悪い気もしなくもないが、まぁいいか。腕にくっつく悟飯をそのままにお父さんの話に耳を傾ける。なんでもデンデくんは、お父さんが新ナメック星から連れてきた新しい神様なんだそうで、これからは神殿に行けば毎回デンデくんに会えるわけだ。しかも現最長老様であるムーリさんの太鼓判つき。
やったねピッコロさん!私の周りに楽園が増えたよ!そんな思いを込めた目で彼を見ると心底嫌そうに顔を背けられた。ちょ、私あーたの弟子なのに扱いひどくない?泣くぞ。シュエたん泣いちゃうぞ。そう睨むもののピッコロさんが表情を変えることはなかった。酷ひ。
「ど、ドラゴンボールは100日くらいあればできると思います」
「ひゃ、100日ぃ1?そんなにかかんのけ?」
「あう……え、えと…そうだ、前に使ってたドラゴンボールや龍の模型さえあれば、すぐにでも復活できますよ!」
「ほんとけ?」
「前のやつなら、石になって世界中に転がってるよね」
「龍の模型、ミスター・ポポが作ったやつある」
「いいぞ!バッチリじゃねーか!」
「やったぁ!」
ああん悟飯きゃわたん。やったぁだなんてそんな…。おねぇをキュン死にさせる気かッ!全くけしからん。
そうこうしている間にドラゴンボールの方針などが決まり、デンデくんによって唱えられたナメック語が再びドラゴンボールに命を吹き込んだ。高く放たれた閃光が弾け、7つの軌跡に分断される。そして神龍の模型が入っていたガラスの中はカラになっていたのだった。
「これでドラゴンボールは復活したと思います」
「……え、もう!?」
「早…」
「さっすがデンデ!」
ぽかん、とはしゃぐデンデくんと悟飯とクリリンさんを見つめた。い、一瞬だったなぁ。さすがはムーリさんが推しただけのことはある。だってデンデくんの治癒術もすごかったもの。
「ねぇねぇピッコロさん、復活したってことは、ドラゴンレーダーにも反応が映るってことだよね」
「そうなるな」
「だから今からオラがブルマにドラゴンレーダーを借りて、探しに行ってくる!」
「頼んだぞ」
「私も手伝おうか?」
「いんや、シュエは悟飯とここでセルゲームの日までデンデと遊んでてくれ。特訓はもういいからさ」
「は、…」
「え…でもお父さん…」
「でーじょうぶだって!」
そう言ってお父さんは瞬間移動で去ってしまった。戸惑うトランクスさんの反応は正しい。誰だって脅威のセルとの決戦が目前に迫ってきている時に、あんな余裕をかます人間はいないはずだ。…あれほど言ったのにお父さんは目的を変える気はないらしい。トランクスさんが重々しく口を開いた。
「…悟飯さん、シュエさん、どういうことか聞いてませんか?」
「え?」
「悟空さんは自分よりセルの方が強いとはっきり言い、弱点も知らないと。…それなのに、なぜあんなに明るく…」
「わ、わかりません…お父さんは僕にも教えてくれなくて…。ただ、楽しみにしていろって」
「た、楽しみに…?」
ピクッと肩が揺れたけど、誰にも気づかれることはなかった。楽しみにしていろだなんてそんな他人事な…
少なくとも私はお父さんの目的を把握しているつもりだ。だからそれを阻止するのも姉としての私の務めだと思ってる。たとえそれが私のエゴだとしても、大好きな悟飯を死に急がせるようなマネはさせないから。ガリッと唇を噛み締める。
「…お姉ちゃん、どうしたの?」
不意に悟飯が私の顔を覗きこんだ。どこか不安げに揺れる青い瞳にどくり、と心臓が不規則に脈打つが、何とか平常を装って笑顔を作る。
「、……悟飯?どったの。デンデくんまでそんな深刻そうな顔して」
「いえ…なんだか顔色がよくなかったから…大丈夫ですか?」
「あー、うん。だいじょーぶだいじょーぶ、へっちゃらだよー」
「…本当に?」
「ほんとほんと!だから君らがそんな顔しなくてもいいの!ほらスマイル!笑えー!」
「「むぐッ」」
にょーん、と2人のほっぺを横に伸ばすと伸びるわ伸びるわ。もちもちほっぺ最高でござる。
そんな2人のほっぺから手を離し、2人まとめてぎゅーっと抱きしめた。うん、かわいい。
「守るからね。絶対…」
私の呟きは風に乗せられて消えた。
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