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程々にしてよね



想いが通じ合ったからといって、別段私たちが何かしら変わることはなかった。いつも通りの誰から見ても仲のいい姉弟。あぁでも、悟飯からのスキンシップが少し露骨と言うか…なんというか、激しくなったよね。

例えば朝起きて顔を洗ってるとき。


「お姉ちゃんおはよう」

「んー…おはよ…」

「まだ寝惚けてるの?可愛い」

「……………ん?」

「あ、そうだ!」

「……んんん!?」

「おはようのキスって大事だよね」


とかいけしゃーしゃーとのたまって私の頬にちゅーしたり。
例えばお風呂上がりに部屋でぼーっと本を読んでいるとき。


「…………」

「お姉ちゃん、ここの問題教えてほしいんだけど…って、また髪の毛ちゃんと拭いてない」

「ほっといたら乾くよ」

「ダメだよ、傷んじゃう。それにお姉ちゃんは女の子なんだから、髪は大切にしないと。ほら、僕が拭いてあげる」

「お、おう…」

「…お姉ちゃんの髪って、僕と違ってふわふわしてるよね」

「そうかなぁ…あんま変わらないと思うけど」

「そんなことないよ。それに、なんだかいい匂いがする」

「……ん?」

「僕、やっぱりお姉ちゃんの匂いって好き…」

「…んんんん!?」


とか言って首筋に顔を埋めてきたり。あぁ、あげたらきりがないよ。こんな感じで、四六時中とまではいかないけれど悟飯は私にさらにべったりになった。いっそ露骨過ぎてビビるわ。お父さんやお母さんは不思議に思ってるもののまだ気付いてないみたい。けど、クリリンさんはなんとなく察しているようだ。


「気を付けろよ」


と、この前結構真剣な顔で言われた。いや、私じゃなくて悟飯に言ってよ。私からはなんにもしてないんだから。
とにもかくにも、隙あらば人前にも関わらずくっついてこようとする悟飯をそれとなく牽制してはいるのだけど、それもあまり意味は成さないらしい。これ以上私にどうしろと言うのだ。


「はぁ…」

「珍しいだな、シュエちゃんが溜息を吐くだなんて」

「吐きたくもなるよ…」


洗濯物を干す手を止めてお母さんが首を傾げた。悟飯はお父さんとクリリンさんに連れられて街までお買い物に行っている。だから今家にいるのは私とお母さんだけ。
本当は今の現状をお母さんに相談したいところではあるんだけれど、如何せん秘密にしているから言おうにも言えないのだ。てゆーか言った瞬間いろんなものが終わる。


「何に悩んでるのかはしんねぇども、あんま抱え込むのはよくねぇぞ?」

「そうなんだけど…うーん、難しいなぁ…」

「…シュエちゃんは好きな人とかいねぇのか?」

「…………………………………えッ!?」


思わず反応が遅れてしまった。てゆーか、え?好きな人?薮から棒にどうしたの、なんでそんなこと聞くの。
私の中でいろんなものがぽぽぽぽーんした。


「おめぇだって13歳だべ?年頃の女の子なのになーんも浮ついた話を聞かねぇもんだから、おっかぁ心配で…」

「し、心配って…別に私そういうの興味ないし…セルゲームのためにも今はそんなこと言ってられないし…」


それに私には悟飯がいるし…
自分でそう思った瞬間ぼっと顔が熱くなった。それを見たお母さんは瞬く間に目を輝かせ、何やら興奮気味に口を開いた。


「やっぱしいるんだな!?おら安心しただ!なんだかんだ言いつつも、シュエちゃんもちゃんと女の子だったべ!」

「待ってそれどういうこと…」


私は女と認識されてなかったのだろうか。なんてことだ、私ってばちゃんと今まで女の子してきたよ。ほらよく昔を思い出して。あのときとか…

あのときとか…

あー…女の子らしいことなんもしてないかも。昔から修行だのなんだの三昧だったから女としての大切な何かが欠落してる気もしなくはない。それに私お父さんの娘だから。
そう自覚した途端胸いっぱいに虚しさが広がった。切なすぎる事実だ…


「もしかして、あの塾の友達だか?あの子ならおっかぁ大歓迎だべ!」

「ち、違うよ!あいつはただの友達で、別にそんな…」

「ま、何はともあれ、そいつのことちゃんと想っててやるだぞ?」

「……う、ん」


なんか勘違いしてそうな様子のお母さん。違うんだけどな…なんでこんな話になったんだっけ…
まぁ、いいか。なんだかめんどくさくなってきた。






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