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意識しちゃってください




『本日の深夜3時頃、北東の方角にて流星群が見られる可能性があります』


淡々と伝えるラジオのニュースキャスターの情報に思わず口から溢れた。


「流星群かー…」


そういえば久しく天体観測をしていない。何だかんだいろいろあったからなぁ。流星群が見られるのならぜひとも外に繰り出したいところなんだけど…


「ダメだろうなぁ…」


前回は悟飯とこっそり窓から抜け出したんだっけ。できることならもう一度同じ手で行きたいのだけど、さすがにダメか。マジシャンだって1回のショーに同じネタをやるのはタブーって言うし、うーん…流星群見たいなぁ…ダメ元で頼んでみるかな。
のっそりとベッドから腰をあげ、洗い物をしてるであろうお母さんのところに行く。居間でお父さんとクリリンさんと牛魔王のおいちゃんが談笑してる。悟飯がいないところを見ると、あの子は部屋で勉強でもしてるのかな。え、私?今日の分はとっくに終わらせてますぅー。

「ねぇお母さん」

「シュエちゃん?どうかしただか?」

「あのさ、今日の深夜にね、流星群が見れるらしくて…」


ぐっとお母さんの眉間に皺がよった。あ、詰んだかも。


「…行っちゃダメ、かな…」


重い空気が流れる。談笑していたはずのお父さんたちまでもが、気付けば私とお母さんの間に流れるただならぬ空気に固唾をのんで見守っていて…ちょ、見世物じゃないんだけど。


「……おめぇはまたそったらこと言って」

「や、やっぱダメだよね!うん、わかってる、大人しく寝てるよ…」

「…はぁ、行ってもいいだよ」


え、今なんと…?思わずバッとお母さんを見ると、困ったように眉を下げて笑っていた。行っても、いいの…?


「どうせダメだっつっても、シュエのことだから窓からこっそり出て行くに決まってるべ」

「あ、あは…」


どうやら私の魂胆はお見通しのようだ。うーん、ここまできっぱり言い切られるといっそ清々しいというか何と言うか…


「ここだけの話だけどよ、昔、シュエと悟飯がこっそり家を抜け出して流星群見に行ったことなんて、オラたちが気付いてないとでも思ってたのけ?」

「バレてた…だと…」


愕然と床に崩れ落ちた私をクリリンさんが軽快に笑い飛ばした。酷ひ…
いたずらっ子みたいに笑うお父さんを恨みがましくじとり、と見た。


「ただし、1時間したらすぐに帰ってくるだぞ?それと、あんまり遠くに行かないように!」

「うん!ありがとう、お母さん」


そうと決まればさっそく準備に取り掛かろうではないか!望遠鏡でしょ、コンパスに水筒にちょっとしたお夜食に…



「あ、そうだシュエ」


るんるんと足取り軽く自室へと向かう私を呼び止めたのはクリリンさんだった。どうかしたの?


「いや、大した用じゃないんだ。たださ…」

「ただ?」

「もし流星群を見に行くのなら、悟飯もつれてってやれよ」

「…え、元よりそのつもりだけど…」

「そうなの?」

「1人で見るよりいいかと思って。それに、せっかくだから悟飯にも見せてあげたいから」

「そっか…うん、気を付けてな」

「はーい」


何か言いたげなクリリンさんだけど、生憎と今は天体観測の準備で忙しいのだ。彼が居間を去る私をどこか複雑そうに見つめていたなんて知る由もなく。




「ここならよく見えるよね」

「滝の上だなんてお姉ちゃん考えたね」

「いぇーい」


少し早めにシュエたんの個人的観測スポットに着いた私と悟飯は、適当に座って川に足をつっこんでいた。すぐそばは滝なんだけど、落なければ問題はないのだ。まぁ、落ちたとしても私たち舞空術できるし。


「にしても、まさかお母さんが許してくれるとは思わなかったなぁ」

「はは、本当だよね。初めは1時間だけだったのに、いつの間にかキャンプしてこいって言うもん。びっくりしたし」


そうなのだ。時間制限の約束で深夜の外出を許してもらえたのに、お父さんと牛魔王のおいちゃんがお母さんを説得したのか、こうやってキャンプセットを担いでこうして天体観測に赴いているのだ。まぁ、キャンプセットって言っても寝袋とかランタンとか、そんなものばかりだけど。


「あのさ、お姉ちゃん…」


不意に私の手を少し骨張った手が包み込んだ。たまげた私は自分の手と悟飯とを視線を行き来させる。え、なに。どうしたの一体…
いつになく真剣な顔をした悟飯にすっとぼけた言葉をかけることができなかった。


「な、に…」

「…ずっと迷ってたんだ。伝えるべきなのか否か。もしお姉ちゃんに打ち明けてしまったら、心地いいこの関係に二度と戻れない気がして怖かった」


なんとなく察してしまった。悟飯が言わんとしていること。それを聞きたくなくて、私は悟飯の手を振り払い、距離を取るように川の中に入った。


「お姉ちゃん…?」

「…あんた、自分が何を言おうとしてるのかわかってるの」

「…わかってる。わかってるから僕は迷って、でも決めたんだ。胸の内に留めておきたくないから、だから…!」

「悟飯は何もわかっていない!!」


私の絶叫が木霊した。腰あたりを流れる水のおかげで頭に血は上ることはないが、それでも今の私は冷静でいられなかった。


「悟飯はさ、それを伝えてどうしたいの?」

「どうって…」

「姉弟でそういう関係を持つのがどういうことか、考えたことある?世間体から弾かれ、疎まれ、気持ち悪い目で一生後ろ指さされて。…私たちが思っているより、世界は残酷なんだから…」


それにきっと悟飯のそれは、恋愛感情とか大層なものなんじゃない。家族に向ける親愛的なもの。それを勘違いしているに過ぎない。悟飯だって11歳だもの。小さい頃から大人に混じってて、ちゃんと自立した考えだってできる。だから、余計私なんかに目を向けちゃいけないんだよ。
…じゃないと、私は…


「…聞いてて思ったんだけど、お姉ちゃんはただ認めたくないだけなんじゃないの?」

「は、…」

「本当は気付いてるんでしょ?でもそれを知らないふりして、目を背けて。…ねぇ、僕の気持ちから逃げないで、ちゃんと向き合ってよ…」

「ッ…こ、ないで…」


私の言葉を無視してざぶざぶと悟飯が川に入ってきた。ゆっくりと、けれど着実に私のもとに歩み寄る悟飯を私はただ見ていた。


「ちゃんと真正面で向き合って、それで…お姉ちゃんの気持ちを聞かせてほしい。もしお姉ちゃんが本当に嫌だったら…」


ついに目の前にやってきた悟飯は、静かな水面のような凪いだ目をしていた。月の光が反射する双眸に見つめられ、まるで金縛りにあったかのように体が動かない。
そっと伸ばされた手が、私の肩に触れた。


「突き飛ばすなり、拒絶するなりしてよ…じゃないと僕、変に期待しちゃうから…」


悟飯の言うことは最もだ。私が本気でこの子を拒むのなら突き飛ばすなりなんなりできたはず。なのに…なのに…


「好きだよ、お姉ちゃん」


どうしてか、私はどの拒絶方法もできないでいる。わかっていたんだ。私の心の奥底に閉じ込めていたものに。それに気付きたくなくて、ずっと姉弟という心地よくて愛おしい関係でいたくて。でもどうして…どこから間違えたんだろう…私…こんなはずじゃなかった…こんな感情を持つつもりはなかった。でも持ってしまったんだ。いつからだっけ。よりにもよって、大切で尊くて愛おしい弟に。

…認めるよ。もう。この子が向き合ってるのに、私だけいつまでも逃げてちゃ示しがつかないもの。私はこの子が好き。いつの間にか好きだった。多分これは、姉弟愛なんてそんな陳腐なものなんかじゃない。

肩に置かれていた手が、遠慮がちに背中に回った。私はそれを静かに受け入れた。


「…拒まない、の…?僕、案外単純だから、勘違いしちゃうよ…?」

「…本当はダメなんだろうけど、こうも悟飯に私の気持ちを見透かされちゃ…なんていうか…私も、逃げてばかりだった。閉じ込めて、言い訳を考えて、でもダメだったよ…」


ぎゅっと悟飯の服の裾を握ると、ぴくり、と肩が揺れる。深く息を吸って、吐いて…


「すき、だよ…悟飯、酷いこと言ってごめん…」

「ううん、お姉ちゃんの気持ちが知れただけで、嬉しい。…ねぇ、お姉ちゃん」


少し体を離した悟飯は、何を思ったか片手を私の頬に添えた。どこか熱の篭った青と目が合う。


「キス、してもいい… ?」

「…えッ!?」


私の聞き間違いではなかったらこの子は今キスと言ったか。キスってあれ?恋人同士がするちゅっちゅのこと?そんなバカな…
動揺していると、悟飯のあざというるうるおめめがぐっと近付いてきた。近い…


「ダメ…?僕、お姉ちゃんとキスしたい」


…ここは一応ダメと言った方がいいのかもしれないけど、こうもこんな目で見られちゃ…いやでも、ここで流されちゃこの子の思う壺だ。瞬きを1回して、悟飯の唇に指を置いた。


「き、キスは、まだダメ…私、まだちゃんと整理ついてないし、こんな心境のまましたくない…。でも…せ、セルゲーム終わってから、なら…いい…ょ…」

「…!!」


お互い湯気が出そうなほど顔を真っ赤にさせて、川の中で抱き合う姿はなんとも異様な光景なのだろうか。気付けば空には大量の流星群が、所狭しと降り注いでいた。





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長い上に最後が無理やりすぎた…
がっつり近親相姦入ってます。苦手な方ごめんなさい。



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