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反論さえ呑み込んで
「おらの…おらの悟飯ちゃんとシュエちゃんが不良になっちまっただぁあああああああああああああああああああ!!!!!」
案の定発狂したお母さんであった。
「うーん、気持ちいいねぇ…」
「ほんと…のんびりだねぇ…」
ぽかぽかと温かい陽だまりの中、川の畔で寝そべる私と悟飯はぽつりとそう漏らした。こうもあったかいと眠くなるなぁ。ぴちゅぴちゅと青空を横切る鳥たちを見送りながら欠伸を噛みしめた。
セルゲームを8日後に控えた今、こんなにのんびりしててもいいのかなって思う時はあるけれど、お父さんがいいって言うんならいいかなって。諦めてるよもう。こうなりゃとことん怠惰な生活送ってやるんだから。
「ふぁー…」
「お姉ちゃん、眠いの?」
「ん、まーねぇ。昨日遅くまで本読んでたから、ちと寝不足」
「じゃあちょっと寝てたらいいよ。気付いてないかもだけど、お姉ちゃん目の下の隈すごいよ?」
「うっそ、まじか…」
よっこいせと起き上って川をの覗き込んでみれば、あらあらまぁまぁ真っ黒じゃないの。朝に鏡見たときは気にならなかったんだけどなぁ。
「むむ…どうしたものやら…」
「…なんなら僕が腕枕してあげようか?」
「えー…悟飯が…?」
にこにこと自分の腕を伸ばしてさぁ来い!と言わんばかりの笑顔を私に向けてくる悟飯にたじろぐ。ちょ、なんでこんなにいい笑顔なのよこの子…私にどうしろと言うのかね…
「素直に横になればいいと思うよ」
「…言うようになったなお前」
「お姉ちゃんの弟だから。ほら、早くー!」
「ぅ、わ…!」
ぐいっと腕を引かれてバランスを崩した私は悟飯の上に倒れ込んだ。慌てて起き上ろうとするも、がっしりとホールドされてしまっている。言葉通り目と鼻の先には、青空を映したようなきれいな目玉がゆるりと細められていてどくり、と心臓が跳ねた。
あれ、私…
「ふふ、僕が小さい頃、よくお姉ちゃんにこうやって抱っこしてもらったなぁ」
「あれ、そうだっけ」
「えー、忘れちゃったの?こうやって…」
「、…」
「心臓の音を聞かせるようにして、僕が眠るまでずっと背中を叩いてくれて」
覚えてる、ちゃんと覚えてるよそんなこと。忘れてるわけないじゃないか。だって、そうやって胸に耳を押し付けて宥めるのって今でもやってるから。そうしたら悟飯はいつだって泣き止んでくれたから。今ここで私がされるだなんて思わなかったなぁ。
目を閉じて悟飯の胸に擦り寄ると、とくん、とくんと心地いいリズムを刻んでいる。なるほど、これは落ち着くわ。あー、目閉じてたら眠くなってきたなぁ。やっぱ夜更かしはするもんじゃないね。悟飯も寝てていいって言ってたし。うん、寝よう。
1時間くらいしたら起こしてね。
「…ね、ねぇ、お姉ちゃん…」
「………」
「…お姉ちゃん?」
「すー…すぷぷ……すぷー…」
「なんだ、寝ちゃったのか。にしても変な寝息…」
「可愛い」
僕も寝よーっと。
自分の腹の上で眠るシュエを抱き直した悟飯は、2、3度彼女の頭をなでると同じように目を閉じた。
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