言いたい、言えない

レッドとグリーン | ナノ
変わらないと思っていた。

お前だけは変わらずに、いつまでもお前のままでいるんだと。
浅はかだったガキの俺はそう思い安心して気づけなかった。
お前の抱える闇に。


「チャンピオンが何シケたツラしてるんだよ」
「…なあ、グリーン」
「何だよ?」
「見えないんだ、もう」
「は…?」
「終わりは新しい始まりだって誰かが言ってたけど、僕にはもう何も見えない。
先も未来も、可能性も」
「……レッド…?」

心配そうに肩に乗るピカチュウを撫でるアイツの悲しい笑顔を見た時に、俺は気付くべきだったのに。


今はもう、何もかも、遅い。








「何年山籠もりしてんだよ、お前は」
「………グリーン」

シロガネ山に登るのもこれが何度目か知れない。昔の自分ならばすぐにバテてこいつに罵詈雑言を浴びせていたのだろう。…我ながら、思い出したくない黒歴史だ。
…それは置いておくとして。

「この前ジョウトから女の子が来てな、…久々に負けたぜ」
「………」

こいつの何処か遠くを見ているような瞳を見るのも、何度目だろう。昔は多かった口数も今ではめっきり減って、数えられるほどしか言葉を発しない。



「…少し、お前に似てたよ」
「……そう」

少しだけ、レッドが反応した。
…いずれ、コトネは此処に来るのだろうと思う。
それに少しだけ俺は期待をしていた。
コトネなら、もしかしたら、コイツに勝てるかもしれない。

…まっすぐな目をした、レッドと似ているようで対極の位置にいる少女。誰か大切な人間がいるのかとなんとなく聞いてみれば、愛おしそうに『ちょっとグリーンさんに似てる子なんですけど』と苦笑をしていた。
それにまた、俺は後悔した。
俺もそんな風に、コトネが想う、その人間のようにコイツのそばにいれば良かったと。


でも、コトネなら…レッドを、救ってやれるかもしれない。


俺が、出来なかったこと。


「…んじゃ、また来る」
「グリーン」

踵を返して歩き始めてた途端、久々にハッキリとしたレッドの声が響く。驚いて振り返ると、レッドは少しだけ、表情を動かした。

「…ありがとう」

そう言って、今度はヤツが踵を返し歩き出す。
俺は何を言えばいいかわからないまま、両拳を握りしめて、俯いた。


「ありがとう、なんて言うな」


俺だって、お前に言いたいことがあるのに。



俺には言う資格が無い言葉。






「……戻って来いよ」




今度こそ、そばにいるから。







end
レッドさんもなんだかんだでグリーンさん好きです。
でも、あえて言えない。
あえて言わない。
そして何気にライ主入りました、すみません(笑)



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