ぼくと君の始まり





「高校出たら一緒に暮らそうぜ」

そう言われたのは、藤君と付き合ってもうすぐ三年立つかとしみじみと思った高校三年生の冬。
男同士で結婚が出来ない僕と藤君にとって、一緒に暮らすという事は、たぶん。

「…藤君、それ…僕の都合の良いようにとってもいいの?」


――――プロポーズって。


「あのな、アシタバ」

目を見開いて感動のあまり涙目になっている僕の頬に、藤君の手が触れた。
そのまま優しく撫でられて思わずぎゅっと目を閉じる。


「都合良くとってくれねぇと、俺が困る」


そう言って苦笑する藤君に、僕は勢い良く抱きついて、ありったけの力でぎゅうっと抱きしめた。
あまりにも嬉しくて、幸せで、破裂しそうなこの感情を好きという言葉にしてたくさんたくさん吐き出しながら。













はらはら ひらひら

薄紅の桜が舞い散る様子がアパートの小さな窓から見える。
やっぱり二階にして良かったとくすりと笑ってから、僕はまたダンボールから荷物を取り出して整理を始める。

あのプロポーズから数ヶ月。
無事に大学に合格した僕と藤君は、家賃を軽くするためという口実を使って両親を説得し、一緒に暮らす事になった。
そして今日は、待ち望んだ引っ越しの日で、みんなに手伝ってもらいながら半日かけて家具だけでも置くことが出来て、僕はこうしてダンボールの方の荷物の整理をしているんだけど……。



「ぐーーー………」

「こういう所は何年立っても変わらないよね…」

ダンボールまみれだからよくわからないけど、たぶん居間にあたる所のど真ん中を陣取って気持ちよさそうに寝ている藤君。思い返せば中学の時も、高校の時も、なにかといえば寝ていたような気もする…。

「藤君、起きて。
みんなジュースとか買いに行ってくれてるんだから、少しは片付けないと…」

つんつんと人差し指でつついてみる。すると綺麗に整った顔が少しだけ眉が寄って崩れたので、ちょっと笑いが漏れそうになるのを我慢する。

「…ん……アシタバ?」
「おはよう、まだ引っ越し中なんだから寝たら駄目だよ?」
「いーじゃん、別に」
「…………麓介君」

あまりにもだらだらしてるのであえて名前で呼んでみると、案の定藤君は目を見開いて僕を見つめた。…こう呼ぶと藤が僕に弱くなるのは、最近気づいた事だったりする。

「…たっく」

反則だろ、と寝たままだった藤君は肘をついて上体を起こしてしゃがみこんでいた僕を引き寄せる。
思わずぷっと吹き出して、拗ねたような表情の藤君に顔を向けた。

「ほら、みんな帰ってくる前に少しでも片づけちゃおうよ」
「わかったわかった、…でもその前に」
「………!」

ふわっと髪が頬を撫でたと思ったら、いつの間にか唇が重ねられていた。…やっぱり慣れなくて、照れるけれど。

「……藤君」
「…アシタバ?」

唇が離れる、でも、僕は藤君の頬に手を添えて、笑った。

「…今日は、特別なんだからね」


苦笑する藤君に今度は自分から唇を重ねる。





…新しい始まりの今日くらいは、こんな感じなのもいいかなと開き直りながら。






end
《30分後》
(アシタバー!片づけすすんで―…………………)((!!))
(あ、ごめんうちのっていうか俺の美っちゃんがつい邪魔を)

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なんだろうこのバカップル(笑)




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