(はつこい) |
▼ ※本誌ネタバレ&未来捏造 あれはいつだったか。 確か幼稚園で追っかけとやらに追われていた時だった気がする。 幼稚園の隅にある神木と言われる木まで歩いて、その木陰に身を隠そうとした時、見た。 「すー………」 すやすやと大の字になって木の根を枕に眠る、俺と同じ組の。 「…猫森」 親に捨てられて、人間ながら神に育てられているという希少な娘だと父上達が話していたのを聞いた事がある。 同じ組だけれど、こうして間近で見たのは始めてで何か戸惑う。 「…んにゃ」 「…おはよう、猫森」 どうしようか戸惑っていたら、ぱちりと猫森の瞳が開いた。少し驚いたが、平静を保って声をかけてみる。 「あれ?烏間か」 むくりと起き上がって伸びをする猫森は、俺を見てもきゃあきゃあと騒がない。くっついてこないし、手紙も渡しては来ない。自意識過剰では無いけれど、不思議な奴だ。 …そういうのは、やっぱり人間だからなんだろうか。 「まだお昼寝の時間では無いだろう、先生に怒られるぞ」 「…うん、そうだな!起こしてくれてありがとう烏間!」 「…別に、俺が起こした訳では…」 「だけど、烏間来たから気づいてタマ起きれたんだ。だから、烏間のおかげだよ」 「…………っ」 そう言って、にゃははっと楽しそうに笑う猫森の笑顔が、何故か今までより一番輝いて見えた。 急に心音が五月蠅くなる。顔にも熱が集まって来るが、それを出すわけには行かないので必死に耐える。 「なあ、一緒に遊ぶか?」 「え………」 「タマ、まだ烏間と遊んだ事ないから遊びたいんだ」 駄目か?と笑顔で問いかけてくる猫森にどう返事をしたらいいかわからない。胸が痛くてどうしようもなくて、わけがわからなくなる。 そして、気づいた。今までに無い、この感情は恐らく。 「ねこも「タマちゃーん!お迎えが来たわよ―!」 「「え?」」 きょとんといきなりやってきた先生に猫森が首を傾げる。それもそうだ、まだお迎えには早すぎる時間なのに。 「お祖父様がぎっくり腰だかで寝込んでしまったんですって、だから今日は早めに帰る事になったのよ」 「わかった!早く行く」 少し、気が落ちる。顔には出さないけれど、本当は残念で仕方がない、…猫森と遊びたかった。 そんな俺の気持ちを察したのかなんなのかいきなり猫森がこっちを向いて、また笑った。 「烏間、また明日!」 「!」 先生と手を繋いで遠ざかる猫森に返事をする事が出来なかった。我慢の限界で、急いで樹の上に登り身を隠す。これ以上に無いほど、顔が赤くなってしまったから。 「…タマ」 もっと大きくなって、立派な神様になれたら。 いつか、お前に ーーーー………… 「今更だけど烏間大きくなったな!タマと同じくらいだったのに」 「十年も立てば大きくもなる、…猫森もだな」 「うん、よくわからないけどパパ上に美人になって言われるな。おやびんとかにも化けたってー…」 「猫森」 「?」 「好きだ」 (ずっとずっと昔から、お前だけが) end 読んで砂吐いたらすみません(←) 因みに補足すると最後は十年後のタマと烏丸です。 タマは無自覚美人に、烏丸君はグレードアップなイケメンクーデレになってたらいいなと妄想しています。 |