[ それはお姫さま |
※にょたカゲミツ注意※ もしも性別を偽って入隊してたらーーな、話。 ※オミがぶっ壊れてます イチジョウカゲミツと聞けば、誰もが名前から男だと想像するだろう。 しかしそれは、偽りだった。 「カゲミツ―ブラジャー買ってきたよ―」 「「ぶはっ!!」」 仕事も終わった深夜。 ニコニコと文字が飛び交いそうな笑顔でワゴンのドアを開けたキヨタカの発言に、丁度二人そろってビールを飲んでいたヒカルとカゲミツは盛大にそれを吹き出した。 幸いパソコンの方を向いていなかったのが救いだろう。 二人はぜぇぜぇせき込みながらキヨタカを睨みつける。 「キ、キヨタカ!おま、なに…仕事持ってきた的なノリで…げほっ」 「ちょ、カゲミツ大丈…ごほっげほっ」 「…お前等は何をしてるんだ」 「「お前のせいだろうが!」」 呆れた目でランジェリーの紙袋片手に溜め息を吐く偉そうなキヨタカにヒカルがその場にあった書類のファイルをぶん投げるがわざと紙一重で交わされる。そしてまだ、げほげほ咳き込んでヒカルに背中をさすってもらっているカゲミツの前にしゃがみ込むと満面の笑みで紙袋を差し出した。 「ほら、サイズが前より大きくなったから一回りでかいのを買って来たぞ」 「テメェ…!」 「つーか、なんで知ってんだよキヨタカ…」 「俺だからな」 「答えになってねぇ」 キヨタカに掴みかかるヒカルの疑問に内心で頷きつつも、カゲミツはこっそりと紙袋を受け取り中を覗く。 良かった、特に派手なものは無いようだ。 本当はキヨタカから貰った下着等身につけたくは無いがこればっかりは仕方無い。 ヒカルは多分頼み込んだって買いに行ってはくれないし、自分で買いに行ったらバレる可能性が非常に高いからだ。…だからといってキヨタカというのも異常極まりないのだけど。 「…はあ」 「仕方無いだろう、女ってバレて困るのはお前なんだから」 「…わかってる」 元々カゲミツは跡を継ぐ為に男として育てられていた。 師範学校の時だって周りから孤立していたし、皆成長期だったから骨格の違いも目立つ事も無かった。 が、誤算が生じた。 幼い頃だけだと思っていた美しさをそのままに成長したカゲミツは、今は短髪だが髪を伸ばして性別に応じた服を着せればかなりの美女になるという事。 勿論カゲミツに対して自覚は無かったが周りが放っておく筈も無く、すぐに性別を明かして令嬢として扱うと父親に告げられた。 元々オミの事で父親と揉めていたカゲミツはそれをきっかけに家を出て、キヨタカに頼ったのだった。 正直事情を知っているとは言え男性のヒカルと二人暮らしというのは抵抗があったが、手も出されていないし、意外と安全で今ではすっかり慣れてしまった。部隊の仲間もアラタは気づいているかもしれないが、まだ完全にはバレてはいない。 ……まあ他ならぬタマキにバレるならば本望だがそれはそれだ。 「…でも、助かってる」 「愛しのお姫様のお役に立てたなら光栄」 「………キヨタカ」 「冗談だ」 「…はあ」 溜め息を吐きながら紙袋の中身をしまおうと持ち上げた時、ヒカルが目を見開いた。 「……なあ、その袋おかしくねぇ?」 「へ?」 「……カゲミツ、貸してみろ」 「は、ちょ…?!」 ばっと素早くキヨタカはカゲミツから紙袋を奪い取ると、底の部分を見つめて眉を潜め舌打ちをした。そしておもむろに中に手を突っ込めば、底に敷いていた紙を取り出す。そこには小さな薄くて平たい黒い何かが張り付いていた。おそらく紙の下に張り付けられたから気づかなかったのだ。 「…も、もしかして盗聴器かこれ…!?」 カゲミツはさあっと青ざめた。ヤバい。しまった。大変だ。グルグル回り巡る思考を必死に落ち着けながら、キヨタカが勢い良く割ったそれに手を伸ばす。 「…もしかして、今の…」 「誰かはわからんが聞かれたな」 「盗聴なんてセコい真似しやがって…!」 「いやいや、お前が言うなカゲミツちゃん。 …つか、下着売ってる店から仕込んだのかよ…」 「いや、多分新幹線に乗った時に暫く網棚の上に置いていたからその隙にやられたんだろうな…… すまん、カゲミツ」 「いや、それよりキヨタカお前下着買いに何処まで行ってんだよ」 「まあそれより、だ。 ヒカル、明日でいいからこの盗聴器をカゲミツと調べておいてくれ。 多分ナイツオブラウンドの連中の可能性が高いがカゲミツが女と知って得をする奴なんて――」 「……あ"」 「?」 ピタリと、ヒカルとキヨタカが固まった。 きょとんとしているカゲミツを見てから揃ってすっかり割れた盗聴器を見つめる。 二人の頭に浮かぶのは、約一名。 「「………スズメ…!!」」 「雀?」 ――――――― 「……聞いたかいヒサヤ」 「…は、はい」 「カゲミツが女の子!つまり俺と結婚出来る…!セイラは昔からお姉さんが欲しいと言っていたから丁度良いな…ふふふ」 「す、スパ…………オミ?」 「男でも良かったけど…。 というか師範学校の時にもう少し押してれば良かったなあ、そうしたら女という秘密を共有して親密にみたいな感じになると思ったのに…」 「……今からでも、間に合うかと…」 「そうだな、よしちょっとアマネに相談してくるよ。さあゲームの始まりだカゲミツ…!」 「………すまない」 ヒサヤはこっそりと額を抑えた。 ―――――――― (カゲミツ、どうした?)(いや、悪寒が…)((明日から安全な場所にカゲミツを移そう…)) (お姫様奪還ゲームってどうだいアマネ)(………) end? ―――――――― 一話のノリのキヨタカに冒頭の発言を言わせたかっただけでした、すみません(土下座) |